君の隣で、私になれた
「今なんて言った?」
低い声。
湊はソファに座ったまま少し前に屈む。
距離が近付く。
私はすぐに後悔する。
「ごめんなさい」
私の顎に湊が指を添える。
強制的に顔を上げさせられる。
目が合う。
「俺が嫌がるって分かってるよな?」
「はい」
「じゃあなんで?」
「……」
答えられない。
「友達だから?」
私は小さく頷く。
湊が笑う。
でも。
目は笑っていない。
「男女に友情なんてない」
「……」
「お前がそう思ってるだけ」
「……」
「返事は」
「はい」
湊は指を離してソファに腰掛ける。
「海もそう」
私は肩が少し震える。
「水着」
「……」
「なんであんなの着たの?」
「紅羽が選んでくれて」
「だから?」
言葉が詰まる。
「俺以外の男いるのに」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいじゃなくてちゃんと考えて」
「はい」
「お前本当に危機感ない」
「はい」
「優しい男ばっかりじゃないから」
「はい」
「俺がどれだけ心配してると思ってるの?」
「ごめんなさい」
「だから」
湊がまた少し前に屈む。
「謝る前に理解して」
逃げられない。
「はい」
静かになる。
しばらくどちらも喋らない。
湊が小さく息を吐いた。
そして。
ソファから身を乗り出す。
「こっち」
私は顔を上げる。
湊に少し近付く。
湊の手が私の髪に触れる。
優しく撫でる。
さっきまで怒っていた人とは思えないくらい。
「分かればいい」
頭を撫でながら言う。