愛とか恋とかウザいので
◇◇◇
深夜、なんとなく目を覚ましたと蒼弥は、自分の隣で眠る萌依の肩に布団をかけ直す。
そしてマットに肘を突いた手に顔を預けて、頭の位置を高くして、自分の傍らに萌依がいるという現実を噛みしめた。
(一生涯、誰かを愛することなんてないと思っていたのに)
周囲を巻き込み、愛だの恋だのと大騒ぎした両親の離婚騒動を見てきた蒼弥にとって、それは面倒な感情でしかないように思えていた。
人間は限りある時間を生きているのだ。
愛人と過ごすために見え透いた噓をついたり、嫉妬に心かき乱されたりすることに時間を費やすくらいなら、特定の誰かを求めることなく、ひとりでいる方がマシと本気で考えていた。
それでいて今になって思えば、萌依に契約結婚を申し込んだときから、運命はこちらへと傾く予定だったのではないかという気がしてくる。
もちろんそれは後付けの感情でしかないのだけれど。
「人がいると、眠れないですか?」
蒼弥の動く気配で目を覚ました萌依が聞く。
これまで寝室が別だったので、自分がいるせいで蒼弥が寝付けないでいると思ったらしい。
「違う。眠れないじゃなくて、眠るのがもったいないだけだ」
萌依がそのままベッドを抜け出しそうな気配を感じて、蒼弥は慌てて彼女を抱きしめた。
「眠れるなら、起きている方がもったいないですよ」
蒼弥の腕の中に閉じ込められた萌依が、ふにゃふにゃと寝ぼけた声で笑う。
その声が、蒼弥をどうしようもなく幸せな気分にさせる。
「萌依、今更だけど、俺とちゃんと結婚してくれ」
萌依の薄い肩をしっかり抱きしめて蒼弥が言う。
「ちゃんと?」
萌依が蒼弥の腕の中で身を捩った。
こちらを見上げる眼差しは、まだ半分眠っているような雰囲気がある。寝ぼけた頭では、その言葉の意味を一生懸命かんがえているらしい。
そんな彼女を愛おしく想い、その額に口付けを落として言う。
「まずは、萌依が大事に思う人たちに、きちんと挨拶をさせてもらいたい。それに結婚式を挙げたいし、指輪も贈らせてほしい。新婚旅行にも行こう」
それに寝室やリビングも、ふたりで過ごすのに相応しいものに模様替えしていきたい。
これからやりたいことを順に上げていく蒼弥に、萌依がクスクスと笑う。
「今は、ハルモニア百周年の節目で忙しい時期です。まずはそれを優先して、それが終わったら、時間をかけて、一つ一つやっていきましょう」
目が覚めてきたのか、声はさっきよりしっかりしている。
そんな彼女に「これからずっと、一緒にいるんですから焦る必要はないですよ」と言われると、蒼弥としては、自分ひとり感情が先走っているのが恥ずかしくなる。
どうやら初めての本気の恋に浮かれるあまり、目を覚ました状態で夢見心地になっていたようだ。
「確かにそうだな。まずはハルモニア百周年の節目の舞台で、社長としての存在をアピールして、今以上に自分の立場を盤石なものにしたい」
その上で、更なる改革を進めていくつもりだ。
「だとしても、指輪だけは先に贈らせてくれ。そうじゃないと、落ち着いて仕事が手に着かない」
それだけは譲れないと、蒼弥は主張する。
萌依を愛して初めて気付いたことだが、蒼弥はかなり嫉妬深い性格をしているようだ。
だから萌依には、指輪を贈って、常に自分の存在しておきたい。
「うれしい」
萌依がそう言って、蒼弥の胸に甘えた。
深夜、なんとなく目を覚ましたと蒼弥は、自分の隣で眠る萌依の肩に布団をかけ直す。
そしてマットに肘を突いた手に顔を預けて、頭の位置を高くして、自分の傍らに萌依がいるという現実を噛みしめた。
(一生涯、誰かを愛することなんてないと思っていたのに)
周囲を巻き込み、愛だの恋だのと大騒ぎした両親の離婚騒動を見てきた蒼弥にとって、それは面倒な感情でしかないように思えていた。
人間は限りある時間を生きているのだ。
愛人と過ごすために見え透いた噓をついたり、嫉妬に心かき乱されたりすることに時間を費やすくらいなら、特定の誰かを求めることなく、ひとりでいる方がマシと本気で考えていた。
それでいて今になって思えば、萌依に契約結婚を申し込んだときから、運命はこちらへと傾く予定だったのではないかという気がしてくる。
もちろんそれは後付けの感情でしかないのだけれど。
「人がいると、眠れないですか?」
蒼弥の動く気配で目を覚ました萌依が聞く。
これまで寝室が別だったので、自分がいるせいで蒼弥が寝付けないでいると思ったらしい。
「違う。眠れないじゃなくて、眠るのがもったいないだけだ」
萌依がそのままベッドを抜け出しそうな気配を感じて、蒼弥は慌てて彼女を抱きしめた。
「眠れるなら、起きている方がもったいないですよ」
蒼弥の腕の中に閉じ込められた萌依が、ふにゃふにゃと寝ぼけた声で笑う。
その声が、蒼弥をどうしようもなく幸せな気分にさせる。
「萌依、今更だけど、俺とちゃんと結婚してくれ」
萌依の薄い肩をしっかり抱きしめて蒼弥が言う。
「ちゃんと?」
萌依が蒼弥の腕の中で身を捩った。
こちらを見上げる眼差しは、まだ半分眠っているような雰囲気がある。寝ぼけた頭では、その言葉の意味を一生懸命かんがえているらしい。
そんな彼女を愛おしく想い、その額に口付けを落として言う。
「まずは、萌依が大事に思う人たちに、きちんと挨拶をさせてもらいたい。それに結婚式を挙げたいし、指輪も贈らせてほしい。新婚旅行にも行こう」
それに寝室やリビングも、ふたりで過ごすのに相応しいものに模様替えしていきたい。
これからやりたいことを順に上げていく蒼弥に、萌依がクスクスと笑う。
「今は、ハルモニア百周年の節目で忙しい時期です。まずはそれを優先して、それが終わったら、時間をかけて、一つ一つやっていきましょう」
目が覚めてきたのか、声はさっきよりしっかりしている。
そんな彼女に「これからずっと、一緒にいるんですから焦る必要はないですよ」と言われると、蒼弥としては、自分ひとり感情が先走っているのが恥ずかしくなる。
どうやら初めての本気の恋に浮かれるあまり、目を覚ました状態で夢見心地になっていたようだ。
「確かにそうだな。まずはハルモニア百周年の節目の舞台で、社長としての存在をアピールして、今以上に自分の立場を盤石なものにしたい」
その上で、更なる改革を進めていくつもりだ。
「だとしても、指輪だけは先に贈らせてくれ。そうじゃないと、落ち着いて仕事が手に着かない」
それだけは譲れないと、蒼弥は主張する。
萌依を愛して初めて気付いたことだが、蒼弥はかなり嫉妬深い性格をしているようだ。
だから萌依には、指輪を贈って、常に自分の存在しておきたい。
「うれしい」
萌依がそう言って、蒼弥の胸に甘えた。