愛とか恋とかウザいので
***
スマホを操作する萌依は、昨日の仁美との賑やかなひと時を思いだして表情を和ませる。
今更、亨介や眞希子のことで悩まされるのは不快だが、気心の知れた親友と過ごすのは楽しいものだった。
そしてそんな大事な親友の結婚式を台無しにしないために、萌依としては自分の装いをどうにかしたい。
「なんだか、どれもピンとこないな」
亨介と付き合っている頃はそれなりに頑張っていたつもりだけど、もともとあまりお洒落に興味がないので、ハルモニアに転職してからはシンプルな服装ばかり選んで着ていた。
そのせいもあってか、次々と表示されるドレスやメイクはどれも、自分に似合う気がしない。
既に仁美の結婚披露宴に着ていくためにシックなデザインの黒いドレスは準備してあるのだけれど、眞希子に『喪服みたい』とか言われそうなのでやめておく。
「着た時のシルエットとかも、確かめた方がいいよね」
そうなると、ネットショッピングではなく、実店舗に行って選ぶべきだろう。
それにドレスに合わせて、アクセサリーや小物も選び直す必要がある。
仁美の結婚披露宴は次の日曜日なので、それまでに準備を整えるのは大変だ。
「どうしよう。服を選ぶためのお店選びでつまずいてる」
萌依がスマホ画面を眺めて、ぐぬぬと難しい顔をしていると、頭上から声が降ってきた。
「百面相しながら、なにを見ているんだ?」
声に反応して背後を振り仰ぐと、蒼弥が立っていた。
「え? あ、社長」
ファッションアイテムの検索なんて、普段の自分らしからぬ行動に気まずさを覚えて、萌依はスマホを伏せた。
「昼食は取ったのか?」
萌依のスマホに興味を示すことなく、蒼弥が聞く。
言われて壁掛け時計に視線を向けると、あと少しで昼の休憩が終わりを告げようとしていた。少し検索してから食事に行こうと思っていたのだけど、いつの間にか昼休みを使い果たしていたらしい。
蒼弥の方は、食事をして戻ってきたところのようで、自分が出掛けると時と同じ状態で萌依がデスクにいたので気になったのだろう。
「えっと……大丈夫です」
少し考えてから答える。
昨日の仁美との食事で食べ過ぎたので、今日は昼を我慢しよう。
「大丈夫って、どういう意味だ? ちゃんと食ったのか?」
曖昧な萌依の言葉に蒼弥が首をかしげた時、秘書室の電話が鳴った。
液晶に表示されている文字で内線電話であることを確認しつつ、萌依が受話器を取ろうと手を伸ばしたが、それより先に蒼弥がそれを持ちあげた。
「社長室だ」
目の前に秘書がいるのだから、社長自ら電話に出る必要はないのだけど、彼はそういうことを気にしない。
そのまま萌依のデスクに軽く腰かけて、頬と左肩で受話器を挟むようにして通話する。
「はい。……朝比奈? 誰? そうか……わかった」
(え、私?)
自分の名前が出たことに萌依が驚いていると、蒼弥は一度電話を保留にしてこちらを見た。
「受付からだ。十和企興の加茂さんという男性が、アポなしで朝比奈君を訪ねてきているそうだ」
その言葉に、血の気が一気に引く。
「あ……それは……」
仁美の話しを聞いたときに、面倒なことにならなければいいと思ったのだけど、まさか事前の予告もなしに会いに来るとは思ってもいなかった。
「外出しているとでも言っておこうか?」
萌依の硬い表情を見て、蒼弥が気遣わしげに言う。
そうしたい思いはあるが、居留守を使ってやり過ごしても、根本的な解決にはならない。
だったら早く対処した方がいい。
「社長、すみませんが少し抜けてもいいでしょうか?」
昼休みはじきに終わりなので、仕事の方は後で調整は調整させてもらおう。
「かまわんが、大丈夫か?」
よほど硬い表情をしていたのだろう。蒼弥が、なんともいえない顔をする。
それでも萌依が「はい」と返事をすると、萌依が受付に向かうことを伝えて通話を終わらせた。
「ついていこうか? それか、少し待てば、渥美か塩井さんが戻ってくると思うが……」
「大丈夫です」
こんなことに、蒼弥たちを付き合わせるなんてとんでもない。
スマホと財布を用意した萌依は、ハルモニアの隣のビルに入っているカフェで話しをしてくるので、急ぎの用があれば呼び戻してほしいと言い置いて社長室を出た。
スマホを操作する萌依は、昨日の仁美との賑やかなひと時を思いだして表情を和ませる。
今更、亨介や眞希子のことで悩まされるのは不快だが、気心の知れた親友と過ごすのは楽しいものだった。
そしてそんな大事な親友の結婚式を台無しにしないために、萌依としては自分の装いをどうにかしたい。
「なんだか、どれもピンとこないな」
亨介と付き合っている頃はそれなりに頑張っていたつもりだけど、もともとあまりお洒落に興味がないので、ハルモニアに転職してからはシンプルな服装ばかり選んで着ていた。
そのせいもあってか、次々と表示されるドレスやメイクはどれも、自分に似合う気がしない。
既に仁美の結婚披露宴に着ていくためにシックなデザインの黒いドレスは準備してあるのだけれど、眞希子に『喪服みたい』とか言われそうなのでやめておく。
「着た時のシルエットとかも、確かめた方がいいよね」
そうなると、ネットショッピングではなく、実店舗に行って選ぶべきだろう。
それにドレスに合わせて、アクセサリーや小物も選び直す必要がある。
仁美の結婚披露宴は次の日曜日なので、それまでに準備を整えるのは大変だ。
「どうしよう。服を選ぶためのお店選びでつまずいてる」
萌依がスマホ画面を眺めて、ぐぬぬと難しい顔をしていると、頭上から声が降ってきた。
「百面相しながら、なにを見ているんだ?」
声に反応して背後を振り仰ぐと、蒼弥が立っていた。
「え? あ、社長」
ファッションアイテムの検索なんて、普段の自分らしからぬ行動に気まずさを覚えて、萌依はスマホを伏せた。
「昼食は取ったのか?」
萌依のスマホに興味を示すことなく、蒼弥が聞く。
言われて壁掛け時計に視線を向けると、あと少しで昼の休憩が終わりを告げようとしていた。少し検索してから食事に行こうと思っていたのだけど、いつの間にか昼休みを使い果たしていたらしい。
蒼弥の方は、食事をして戻ってきたところのようで、自分が出掛けると時と同じ状態で萌依がデスクにいたので気になったのだろう。
「えっと……大丈夫です」
少し考えてから答える。
昨日の仁美との食事で食べ過ぎたので、今日は昼を我慢しよう。
「大丈夫って、どういう意味だ? ちゃんと食ったのか?」
曖昧な萌依の言葉に蒼弥が首をかしげた時、秘書室の電話が鳴った。
液晶に表示されている文字で内線電話であることを確認しつつ、萌依が受話器を取ろうと手を伸ばしたが、それより先に蒼弥がそれを持ちあげた。
「社長室だ」
目の前に秘書がいるのだから、社長自ら電話に出る必要はないのだけど、彼はそういうことを気にしない。
そのまま萌依のデスクに軽く腰かけて、頬と左肩で受話器を挟むようにして通話する。
「はい。……朝比奈? 誰? そうか……わかった」
(え、私?)
自分の名前が出たことに萌依が驚いていると、蒼弥は一度電話を保留にしてこちらを見た。
「受付からだ。十和企興の加茂さんという男性が、アポなしで朝比奈君を訪ねてきているそうだ」
その言葉に、血の気が一気に引く。
「あ……それは……」
仁美の話しを聞いたときに、面倒なことにならなければいいと思ったのだけど、まさか事前の予告もなしに会いに来るとは思ってもいなかった。
「外出しているとでも言っておこうか?」
萌依の硬い表情を見て、蒼弥が気遣わしげに言う。
そうしたい思いはあるが、居留守を使ってやり過ごしても、根本的な解決にはならない。
だったら早く対処した方がいい。
「社長、すみませんが少し抜けてもいいでしょうか?」
昼休みはじきに終わりなので、仕事の方は後で調整は調整させてもらおう。
「かまわんが、大丈夫か?」
よほど硬い表情をしていたのだろう。蒼弥が、なんともいえない顔をする。
それでも萌依が「はい」と返事をすると、萌依が受付に向かうことを伝えて通話を終わらせた。
「ついていこうか? それか、少し待てば、渥美か塩井さんが戻ってくると思うが……」
「大丈夫です」
こんなことに、蒼弥たちを付き合わせるなんてとんでもない。
スマホと財布を用意した萌依は、ハルモニアの隣のビルに入っているカフェで話しをしてくるので、急ぎの用があれば呼び戻してほしいと言い置いて社長室を出た。