この恋心を悟られてはいけない
「リオネル様、ヴェルデ嬢、ご無事ですか!」
「問題ない。犯人を確保した。連れていけ」
「はっ!」

 やってきた騎士達によって男は回収されていく。
 カナリアや鎖というワードを発していたことから、彼女を毒殺したのも彼で間違いないだろう。

 これにて一件落着。
 男の姿が見えなくなり、緊張で強張っていた身体から力が抜けてしまう。

「大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます」
「今、女性を呼ぶ。いや、店長の方がいいか」

 ヴェルデを支えたまま、リオネルは周りを確認する。

「あの、一つ聞いてもいいですか?」
 彼と離れる前に、ヴェルデにはどうしても聞いておきたいことがあった。

「なんだ?」
「さっき、私のこと愛してるって……。あれは本当、ですか? 犯人の手前、そう言っただけならいいんです。気を遣っていただく必要は全くなくて……」

 恥ずかしくて顔から火が出そうだ。声は震えてしまっていることだろう。

 けれどリオネルはあくまでも仕事でヴェルデに付いていてくれただけ。
 この機会を逃したら次いつ会えるか分からないのだ。

 緊張するヴェルデとは対照的に、リオネルは申し訳なさそうに眉を下げる。

「本当だ。だが俺の家で暮らすように提案したのは君を守るためだ。断じて下心などではない。……君に負担をかけないよう、この気持ちを伝えるつもりもなかった。警護していた相手が実は好意を寄せていたなんて気持ち悪いだろう。忘れてくれ」
「気持ち悪くなんてないです! 私も、好きでしたから。七年前のあの日、治療しながら話を聞いてくれたあなたに一目惚れをしたんです……」
「ヴェルデ嬢……」
「仕事じゃなくても、私と会ってくれますか?」
「それはつまり……恋人になってくれるということだろうか」
「リオネルさんさえよければ」
「嫌なはずがない! 好きだ、ヴェルデ嬢。愛してる」
「どうかヴェルデと」
「なら俺のことはリオネルと呼んでくれ」

 先ほどとは違う。
 正面から全身を包み込むように抱きしめられる。彼の胸からはバクバクと心臓が跳ねる音が聞こえる。きっとヴェルデの鼓動も同じくらい激しく動いているのだろう。

「ヴェルデ!」
「無事か!」
 勢いよくドアが開いた音にビクンと身体が跳ねた。裏口から出てきたのは店長とニーナである。
 抱き合う二人を前にして、アンセルは気まずそうに目を逸らしている。

「私は無事です。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「そこの騎士がちゃんと見ていれば!」
「ニーナ。嫌味をいうのは後にしてやれ。戻るぞ。……邪魔して悪かったな」

 店長はニーナの腕を引くと、ゆっくりとドアを閉めた。
 リオネルとヴェルデは顔を合わせて、フッと笑いを溢す。

「あとで謝りにいかないと」
「なら俺も一緒に行こう。付き合ったことを報告したい。愛してる、ヴェルデ」

 七年前、強く心惹かれた黄金の瞳にヴェルデは今見つめられている。
 頬に手を添えられたのを合図にゆっくりと目を閉じる。遅れてやってきたキスと、この先も続くであろう幸福に身を委ねるのだった。

(完)
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