氷の旦那さまに愛されて、15歳の私ははじめての恋を知る。
家族にも嫌われている私が政略結婚⁉
「お前のような嫌われ者が、我が家の役に立つ時が来た」
父上がそう、私に言った。
私・千歳小雪は、家族にも嫌われ、虐げられて生きてきた。
その理由の一つが……。
「父さん! わたしね、今日数学のテストで満点をとったの!」
「深雪はすごいな~。ほら~、小雪も見習いなさい!」
私のひとつ上の姉・深雪お姉さまは、わたしと比べ物にならないくらいなんでもできる。
家事だって、勉強だって、運動だって。
本当に姉妹なのか疑いたくなるくらい……。
「あ、そうだ。お前が役に立つって言うのはな……。結婚した貰うぞ」
け、結婚?
「私(わたくし)、まだ15歳なのですが……」
「絶対だ! 今日の夜、この家を出ていけ。嫁ぎ先は―――皇(すめらぎ)家だ。あの『氷の旦那さま』と呼ばれる、皇 清正(きよまさ)様のところへ行ってもらう」
皇、清正様……。
街で一番恐ろしくて、冷酷無比だと噂されている、あの「氷の旦那さま」。
逆らった者は容赦なく破滅させられるという、恐ろしい噂ばかりを聞くお方だ。
「な、なぜ、私が……」
「清正様が『誰でもいいから妻を一人差し出せ』と仰ったんだ。我が家から出すなら、役立たずの使用人同然のお前しかいないだろう? 深雪を行かせるわけにはいかないからな!」
「よかったじゃない、小雪。何にもできないあなたを引き取ってくれる奇特な人がいて。噂だと、すごく冷たくて怖い人らしいから、お父様も私をあんな恐ろしい家にやれないって心配してくださったのよ。私の代わりに、しっかりお役に立ってきなさいね?」
お姉さまの言葉に、お父様も満足そうに頷いている。
……そうか。私は、お姉さまの身代わりなんだ。
お姉さまを見ると、どこかホッとしたような、そして私を哀れむような目で見下ろしていた。
ああ、私はやっぱり、この家ではいらない存在だったんだ。
拒否権なんて、最初からなかった。
「……分かりました。今まで、お世話になりました」
私は深く頭を下げた。涙をこらえるのに必死で、声が震えてしまう。
「今まで育ててくれてありがとう」なんて、心からは言えなかったけれど。
せめて最後くらい、出来損ないの娘なりに、お行儀よく家を出ようと思った。
私を引き止める声は、誰からもかからなかった。
「早く出ていけ」と言わんばかりの視線に背を向け、私は最低限の荷物だけを持って、夜の街へと踏み出した。
これから待っているのは、噂通りの恐ろしい地獄なのだろうか。
そんな不安で胸をいっぱいにしながら、私は『氷の旦那さま』の待つお屋敷の門を叩いた――。
荷物なんて、小さな鞄ひとつだけ。
私はその日の夜、冷たい雨が吹きすさぶ中、実家を追い出されるようにして皇の屋敷へと向かったのだった。
父上がそう、私に言った。
私・千歳小雪は、家族にも嫌われ、虐げられて生きてきた。
その理由の一つが……。
「父さん! わたしね、今日数学のテストで満点をとったの!」
「深雪はすごいな~。ほら~、小雪も見習いなさい!」
私のひとつ上の姉・深雪お姉さまは、わたしと比べ物にならないくらいなんでもできる。
家事だって、勉強だって、運動だって。
本当に姉妹なのか疑いたくなるくらい……。
「あ、そうだ。お前が役に立つって言うのはな……。結婚した貰うぞ」
け、結婚?
「私(わたくし)、まだ15歳なのですが……」
「絶対だ! 今日の夜、この家を出ていけ。嫁ぎ先は―――皇(すめらぎ)家だ。あの『氷の旦那さま』と呼ばれる、皇 清正(きよまさ)様のところへ行ってもらう」
皇、清正様……。
街で一番恐ろしくて、冷酷無比だと噂されている、あの「氷の旦那さま」。
逆らった者は容赦なく破滅させられるという、恐ろしい噂ばかりを聞くお方だ。
「な、なぜ、私が……」
「清正様が『誰でもいいから妻を一人差し出せ』と仰ったんだ。我が家から出すなら、役立たずの使用人同然のお前しかいないだろう? 深雪を行かせるわけにはいかないからな!」
「よかったじゃない、小雪。何にもできないあなたを引き取ってくれる奇特な人がいて。噂だと、すごく冷たくて怖い人らしいから、お父様も私をあんな恐ろしい家にやれないって心配してくださったのよ。私の代わりに、しっかりお役に立ってきなさいね?」
お姉さまの言葉に、お父様も満足そうに頷いている。
……そうか。私は、お姉さまの身代わりなんだ。
お姉さまを見ると、どこかホッとしたような、そして私を哀れむような目で見下ろしていた。
ああ、私はやっぱり、この家ではいらない存在だったんだ。
拒否権なんて、最初からなかった。
「……分かりました。今まで、お世話になりました」
私は深く頭を下げた。涙をこらえるのに必死で、声が震えてしまう。
「今まで育ててくれてありがとう」なんて、心からは言えなかったけれど。
せめて最後くらい、出来損ないの娘なりに、お行儀よく家を出ようと思った。
私を引き止める声は、誰からもかからなかった。
「早く出ていけ」と言わんばかりの視線に背を向け、私は最低限の荷物だけを持って、夜の街へと踏み出した。
これから待っているのは、噂通りの恐ろしい地獄なのだろうか。
そんな不安で胸をいっぱいにしながら、私は『氷の旦那さま』の待つお屋敷の門を叩いた――。
荷物なんて、小さな鞄ひとつだけ。
私はその日の夜、冷たい雨が吹きすさぶ中、実家を追い出されるようにして皇の屋敷へと向かったのだった。
< 1 / 10 >