氷の旦那さまに愛されて、15歳の私ははじめての恋を知る。

氷の旦那さま

「は、初めまして。千歳小雪と申します。これから、お、お世話に……っ」
あまりの緊張と恐怖で、声が震えて、涙がボロボロと溢れてきてしまう。
街一番の権力者で、冷酷無比と噂される「氷の旦那さま」。
きっと、挨拶もまともにできない私を見て、激怒して追い出すか、それとも――。
私はギュッと目を瞑り、これから下されるであろう冷たい言葉を待った。
しかし、聞こえてきたのは、予想外に優しく、深く心地よい男の人の声だった。
「……そんなに怯えなくていい。まずは顔を上げて、俺を見てくれないか」
恐る恐る目を開け、視線を上に動かす。
そこにいたのは、冷酷な怪物なんかではなかった。
夜空のような黒髪に、切れ長で美しい、けれど今はひどく優しく揺れている瞳。
息をのむほど整った容姿の男性――皇清正様が、私の目の前で、なんと床に膝をついていた。
「っ……え?」
身分の高い清正様が、這いつくばるような格好の私と同じ目線に合わせてくれている。
「千歳家で、どんな扱いを受けてきたかは俺は知っている。……よく、無事でいてくれた」
清正様はそう言うと、大きくて温かい手で、私の泥に汚れた小さな手をそっと包み込んだ。
壊れ物を扱うような、信じられないほど優しい手つきだった。
「皇清正だ。今日からお前が、俺の愛しい妻だ。……小雪」
名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ね上がった。
清正様の綺麗な瞳には、私しか映っていない。
それどころか、まるで宝物を見つけたかのように、熱い熱い熱を帯びて私を見つめている。
「あ、あの……私は、何にもできない役立たずの嫌われ者で……お姉さまの身代わりで……」
「身代わりなどではない。俺が欲しかったのは、最初からお前だけだ」
「え……?」と固まる私を、清正様は愛おしそうに目を細めて見つめ、そのまま私の身体をそっと抱きしめた。
「もう怯えなくていい。この家では、お前が一番に愛される。お前をいじめる奴は、俺が絶対に許さない。……だから、俺の前では安心して、笑ってくれ」
耳元で囁かれる甘い言葉。
美味しいごはんの匂いが漂う、温かいお屋敷。
冷たい実家しか知らなかった私に、人生で初めての「温もり」が、出会ったその瞬間に与えられたのだった。
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