Hidden love.
「…え…っ、と…、ごめん。何で?」

「好きな人が出来た」

「…好きな人?」

「ああ」


 必要以上のことを話す気はないのか、それ以上の言葉は帰ってこない。

 正直、腹立たしいとか、そんなものよりも、困惑だけが私の気持ちを占めている。聞きたいことは山ほどあるのに、言葉が出てこない。


「…ちなみに、好きな人って…?」

「常務の娘さん。檜山(ひやま) 莉子(りこ)さん」


 秘書課の人。すぐに頭に思い浮かんだ。可愛らしいボブカットに、ふわふわした愛らしい笑顔と愛嬌、周りを和ませる雰囲気のある素敵な女性。私の六歳年下の二十四歳。

 男性の「女は若い方がいい」という発言もよく聞いていた。その上、檜山さんは私とは全く違うタイプの女性。まさか、四年も付き合った今、こんなことになるとは思っていなかった。


「ちょっ、と、待ってよ…! もうお互いの親にも結婚する話はしているんだよ!?」

「仕方ないだろ。合わないってわかってんのに、結婚しろとでも言うつもりかよ?」

「そうじゃない! でも、何で今なのよ!」

「きぃきぃわめくなよ。うるせぇな。そういうところが嫌になったんだよ」


 気だるげに吐かれたため息。もう、言葉も出なかった。三十歳にして捨てられた女。親の期待も裏切る。そんな事実が襲い掛かってきて、その場で固まる。
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