Hidden love.
「会計だけはしておく。もう、終わりな」


 それだけ言い放つと伝票を持って立ち去ってしまった。その迷いのない背中を見送ることも出来ず、私はテーブルの上の料理を呆然と見つめていた。

 何が、間違えていたのだろうか。彼が忙しいからと、家事もできないことに文句を言わなかった。忙しさで帰りが遅くなる連絡を忘れても、文句は言わなかった。疲れてしまって、何もせず寝てしまっても、料理に文句を言われても、私は耐えて、耐えてきた。だって、仕事でプレッシャーもあるし、忙しさで余裕もないのだと思ってきたから。

 その結果がこれ。尽くしに尽くしてきたつもりだったけれど、彼には何の意味もない。それよりも愛嬌と若さが必要だったのか。それ以上に彼女に何かがあったのか、私にはわからない。

 後になって、悔しさと悲しさと、怒り。いろいろな感情が襲い掛かってくる。もっと責めてやればよかった。もっと怒鳴ってやればよかったと、いろいろな後悔が後から湧き上がってくる。

 一つ溜息を零し、その店を後にした。ここにこのまま残っても惨めなだけ。これ以上恥を晒したくない。

 そのまま家に帰ることも出来ず、その日はホテルに宿泊した。
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