Hidden love.
「でも、訴えるって言っても浮気の慰謝料は取れないわよね…。身体の関係を持ったなんて証拠はない」

「清花さ、録音。まだ残してるよな」


 録音とは、航平が二股していると認めた供述のことだと思う。確かに今も残っている。


「親への挨拶も済んでたって言うし、婚約指輪は?」

「ある」

「それなら、相手のせいで正当な理由もなく婚約破棄することになったって言う条件で、婚約破棄の慰謝料だけは取れるかもしれない。弁護士が知り合いにいるから、相談してみよう」


 話が具体的に動き出すと、ほんの少し怖気づきそうになった。それを振り払うように軽く頭を振り、大樹の方を見ていた。

 彼はスマートフォンを操作している。本当に頼りになる人。私一人じゃここまで動き出せなかった。感謝をどう伝えても足りない。

 私は彼に抱きつくと、少し驚いた表情をして受け止めてくれる。


「……ありがとう。一人にしないって言ってくれたの、嬉しかった」

「…うん」

「でも、どうせ訴えるなら結婚はどっちでもいいんじゃないの? しなくても」


 少しからかうつもりでそう言うと大樹は「は!? なんてこと言うんだよ!」と慌てた声を出していた。そんな彼に思わず笑ってしまう。


「結婚は絶対にするから! 一年は絶対一緒にいてもらうからな。好きな子と一緒の戸籍入る」

「重い」

「重いって言うな」


 そんな言い合いをしている間も大樹の私の頭を撫でている手はずっと優しい。安心させてくれるように、ゆっくりと撫でる。
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