Hidden love.
「…あの、桐生さんが手を出せる範疇ではないと仰っているのに、こんなことを聞くのは間違えているかもしれませんが、どういう風に交渉すべきだと思いますか?」


 桐生さんは少しだけ微笑む。


​「私なら、話し合いの時、そこの力強い味方にまず同席してもらいますかね」

「大樹、にですか?」

「ええ。強力なカードがあるのに使わない手はありませんから。ですが、もちろんこのカードにも取り扱いには注意が必要です」

「人をカード呼ばわりすんなよ」


 大樹のそんな不服そうな発言を無視し、桐生さんはこちらを見ている。


​「大樹には、今回の件を初めて聞くという態度でいてもらう必要があります。最初から大樹が椿さんの味方だと知られると、相手も社長の公私混同、不当な圧力と言われたりして、交渉が厄介になります。まずは徹底的に、知っていたことを隠し通して」

「あの…、実は、数日前に大樹と私は高校の時の同級生で、最近も大樹と私は恋人関係にあるんじゃないかって騒ぎが出たのですが、大丈夫でしょうか…?」


 結婚時期をずらしたとは言え、かなり不利になるのではないかと思った。実際に周りに交際したとは言っていないけれど、そういう風に見られている。


「詳しく聞きたいのですが、おふたりは交際している、とはっきりと会社で公表していますか?」

「いえ…。ただ、彼が社食でいつ結婚する? とか、そんな会話を冗談のように言ってるのは、周りの社員と元婚約者にも知られています」

「……なにしてんの、君」

「いや、俺もこんなことになるなんて思ってなくて…」


 桐生さんは呆れたような表情で、気まずそうな大樹を見ていた。状況としてはかなり面白い。
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