Hidden love.
 航平の最終日はすぐにやってきた。退勤後、帰宅する時に、誰もいない廊下で、航平とすれ違う。

 私は少し目を合わせると、通り過ぎようとした。そのまま横を通る時、「はっ、社長と組んで俺の事追い出せて満足かよ?」と、言葉が飛んでくる。

 この時に思ったんだ。人はやっぱり変わらないのだと。航平に心からの謝罪とか、そんなのを望む方が間違えていた。

 私は振り返ると、思い切り航平を睨みつける。


「全部自分の自業自得でしょ!? 無責任に結婚しようだなんて言って、浮気して、それを自分で言うなんて!」

「お前といると気が休まらねぇんだよ! いつも細かくてうるさくて、完璧を求められてるみたいで! こんなこと言えばどうせお前は、出来てない俺が悪いみたいに思って馬鹿にすんだろうが!」


 その言葉に今まで溜まりに溜まった分が溢れ出す。言葉も涙も、何もかもが崩壊するように。


「私だって辛かった! いつも料理にケチつけられて、いつ帰ってくるかも分からないのを一人で待ち続けて。仕事が忙しいからって言われても私ができることは全部して航平を支えてた! それなのにあんたはその裏で浮気して…!」

「元は誰のせいか考えろよ。お前に可愛げでもあれば、浮気もせずにお前だけ見てたかもしれねぇのにな」


 その言葉に言い返そうとした時に、後ろから肩を抱かれ、心臓が跳ねる。航平ですら、その光景に目を見開いていた。


「左遷を受けて、今の婚約者にも浮気がバレて、腹いせに元カノに暴言か。同じ男として見ていられないな」


 その声と香りで顔を見なくても、誰かなんて分かる。


「あんたでしょ? こいつにいろいろ悪知恵教えたの」

「彼女はやるべき事をしただけだろ。お前は、これ以上恥を晒して何がしたいんだ?」


 航平は大樹の言葉に何も言い返せなくなり、その場を立ち去っていった。ようやく終わったのに、最後は結局、傷付いて終わっただけだった。

 全くスッキリなんてしない。こんなことなら、復讐なんて考えるんじゃなかった。

 必死に涙を拭うと、大樹に「ありがとう」と何とか礼を言うので精一杯だった。彼はそんな私に「おいで」と言って、そのまま腕を引いてどこかに連れていく。

 もうどこに行こうが、なんだって良かった。
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