Hidden love.
 着いた先は、屋上だった。誰もいない。日が沈んでいくのがよく見える。

 涙を必死に堪えていると、突然ぬくもりに覆われ、目を見開く。


「なっ…、に…?」

「もう強がる必要なんてない。俺しかいない」


 そう言いながら、顔を彼の胸に押し付けられ、そのまま頭をぽんぽんと優しく撫でられる。

 その瞬間に涙腺は決壊し、彼のスーツを強く掴んだ。こうして彼の元で泣くのは何度目か分からない。

 いたくて、くるしくて、よわくて、みじめで、こんな私、どこかにいなくなりたいと思った。

 それなのに、彼が私をどこにも生かせない。ただのその場で受け止めて、居場所を作るように包み込んでくれる。

 だから私はこの人の腕の中で、こんなにも安心して泣けるのだ。強がりでプライドの高い私が、唯一声を上げて泣ける場所。ひとりじゃないとこんなふうに感情を顕にできないのに、この人だけは、私を素に戻してくれる。


「よく、頑張ったな。本当にお疲れ様」


 彼の優しい声にも何も言えない。ただ嗚咽を漏らして、泣きじゃくるだけ。
< 57 / 94 >

この作品をシェア

pagetop