レディ・マーメイド
「なに? コースター?」
電話口でそう尋ねる亜紋に、黒木は頷いた。
「はい。金盛社長と須藤社長があの日のパーティーで受け渡しを試みたのは、恐らく紙ナフキンではなくコースターです」
そして樹莉から聞いた話をかいつまんで伝えた。
パーティーの最中、コースターに飲み物がこぼれて染みができていたり、濡れているのを見かけたら、スタッフはすぐに新しいものと交換していること。
本人が話に夢中になっている場合は、気づかれないようにさり気なく。
「実際に樹莉さまにやってみていただきましたが、その手つきは鮮やかで手品のようでした。恐らく金盛社長は須藤社長に、裏面になにかを書き記したコースターを渡そうとしたのではないでしょうか? 直接手渡すのではなく、例えばワインの染みなどをわざとつけて、それを目印に須藤社長が持ち去ろうとした」
立食パーティーは、それぞれが好きな場所で会話をしたり、食事をする。
金盛は目印をつけたコースターの上に並々と注がれたワイングラスを置いておいた。
そして食事を取りにビュッフェカウンターに行く。
スタッフはそのワイングラスを下げることはしない。
ワインはまだ口をつけられていないし、食事を取ってここに戻ってくるだろうからと。
その隙に須藤はそのグラスが置かれたテーブルに近づいた。
目印の染みがついたコースターを探す。
だが見つからない。
もしや他のテーブルかとあちこち見て回ったが、どこにもなかった。
どういうことだと金盛に近づくと、牽制するように睨んで止められた。
パーティーが終わると追いかけて行き、ロビーで詰め寄る。
『話が違う、口先だけだったのか』『私に落ち度はない、ミスをしたのはそっちだ』
そんな二人のやり取りは、
『染みがついたコースターなどなかった。報酬をよこさないつもりか?』
『こっちはちゃんとコースターを置いておいた。探せなかったそっちが悪い』
という意味だったのだろう。
電話口でそう尋ねる亜紋に、黒木は頷いた。
「はい。金盛社長と須藤社長があの日のパーティーで受け渡しを試みたのは、恐らく紙ナフキンではなくコースターです」
そして樹莉から聞いた話をかいつまんで伝えた。
パーティーの最中、コースターに飲み物がこぼれて染みができていたり、濡れているのを見かけたら、スタッフはすぐに新しいものと交換していること。
本人が話に夢中になっている場合は、気づかれないようにさり気なく。
「実際に樹莉さまにやってみていただきましたが、その手つきは鮮やかで手品のようでした。恐らく金盛社長は須藤社長に、裏面になにかを書き記したコースターを渡そうとしたのではないでしょうか? 直接手渡すのではなく、例えばワインの染みなどをわざとつけて、それを目印に須藤社長が持ち去ろうとした」
立食パーティーは、それぞれが好きな場所で会話をしたり、食事をする。
金盛は目印をつけたコースターの上に並々と注がれたワイングラスを置いておいた。
そして食事を取りにビュッフェカウンターに行く。
スタッフはそのワイングラスを下げることはしない。
ワインはまだ口をつけられていないし、食事を取ってここに戻ってくるだろうからと。
その隙に須藤はそのグラスが置かれたテーブルに近づいた。
目印の染みがついたコースターを探す。
だが見つからない。
もしや他のテーブルかとあちこち見て回ったが、どこにもなかった。
どういうことだと金盛に近づくと、牽制するように睨んで止められた。
パーティーが終わると追いかけて行き、ロビーで詰め寄る。
『話が違う、口先だけだったのか』『私に落ち度はない、ミスをしたのはそっちだ』
そんな二人のやり取りは、
『染みがついたコースターなどなかった。報酬をよこさないつもりか?』
『こっちはちゃんとコースターを置いておいた。探せなかったそっちが悪い』
という意味だったのだろう。