レディ・マーメイド
「ようこそいらっしゃいませ、和田社長」
「これはこれは、直々にお出迎えありがとう、小早川さん。またお会いできて嬉しいよ」
「こちらこそ。早速ご案内いたします」
ロータリーで車を降りた和田と挨拶を交わし、二人でエントランスをくぐる。
「やはりこのホテルはとても華やかだね。気分が明るくなるよ。ロビーもよい香りがする。あれ? 小早川さんの制服はフロントスタッフと少し違うんだね」
和田がロビーの奥のカウンターに目を向けて言った。
「はい。基本は黒のスーツですが、バンケットスタッフは催しごとにベストと蝶ネクタイ、スカーフなどで雰囲気を変えています」
「そうなのか。では今日のそのきれいなスカーフは、私の為に? 嬉しいな」
樹莉は薄いピンクのスカーフを花のように整えて首に巻いていた。
「小早川さんは一流のホテルスタッフだね。立ち居振る舞いも美しい」
「いえ、そんな。まだ勤め始めて3年少々ですので、日々勉強を重ねております」
「そうなの? 10年以上のベテランかと思ったよ」
ということは、自分は30代に見られているのか。
そう思っていると、気づいた和田が慌てて否定した。
「あ、ごめん。そうだよね。君はまだ若いよね。失礼」
「いいえ、お気になさらず。和田社長こそお若くして社長の座に就いていらっしゃるなんて、尊敬します」
「私は現場の叩き上げなんだ。18歳からずっとゴールデンワールドホテルで働いてきた」
「そうなのですか?」
それは初耳だと、樹莉は思わず真顔になる。
「フロントも客室も、バンケットもレストランもコンシェルジュも、どの部署もひと通り携わったことがある。だけど経営陣はそういう現場主義の人間を、どう受け入れればいいのかわからないらしくてね。今のポジションは少し、孤独かな。現場で仲間と一緒に接客していた頃が懐かしいよ。あの時が一番楽しかったかもしれない。小早川さんも、今を楽しんでね」
樹莉はその言葉を噛みしめて「はい」と頷いた。
「これはこれは、直々にお出迎えありがとう、小早川さん。またお会いできて嬉しいよ」
「こちらこそ。早速ご案内いたします」
ロータリーで車を降りた和田と挨拶を交わし、二人でエントランスをくぐる。
「やはりこのホテルはとても華やかだね。気分が明るくなるよ。ロビーもよい香りがする。あれ? 小早川さんの制服はフロントスタッフと少し違うんだね」
和田がロビーの奥のカウンターに目を向けて言った。
「はい。基本は黒のスーツですが、バンケットスタッフは催しごとにベストと蝶ネクタイ、スカーフなどで雰囲気を変えています」
「そうなのか。では今日のそのきれいなスカーフは、私の為に? 嬉しいな」
樹莉は薄いピンクのスカーフを花のように整えて首に巻いていた。
「小早川さんは一流のホテルスタッフだね。立ち居振る舞いも美しい」
「いえ、そんな。まだ勤め始めて3年少々ですので、日々勉強を重ねております」
「そうなの? 10年以上のベテランかと思ったよ」
ということは、自分は30代に見られているのか。
そう思っていると、気づいた和田が慌てて否定した。
「あ、ごめん。そうだよね。君はまだ若いよね。失礼」
「いいえ、お気になさらず。和田社長こそお若くして社長の座に就いていらっしゃるなんて、尊敬します」
「私は現場の叩き上げなんだ。18歳からずっとゴールデンワールドホテルで働いてきた」
「そうなのですか?」
それは初耳だと、樹莉は思わず真顔になる。
「フロントも客室も、バンケットもレストランもコンシェルジュも、どの部署もひと通り携わったことがある。だけど経営陣はそういう現場主義の人間を、どう受け入れればいいのかわからないらしくてね。今のポジションは少し、孤独かな。現場で仲間と一緒に接客していた頃が懐かしいよ。あの時が一番楽しかったかもしれない。小早川さんも、今を楽しんでね」
樹莉はその言葉を噛みしめて「はい」と頷いた。