レディ・マーメイド
「亜紋……さん、夕食は?」

覆いかぶさるようにしてキスの雨を降らせる亜紋に、樹莉はなんとか声に出す。

「いらない」
「ダメですよ、ちゃんと食べないと」
「樹莉が先だ」

そう言うと亜紋は指を絡めながら樹莉の手を握り、グッとシーツに押しつけた。

身動きが取れなくなり、亜紋の口づけに樹莉の身体がピクンと跳ねる。

「やっ、ダメ」
「そんな甘い声で、俺を挑発するつもりか?」
「ちが……、んんっ!」
「可愛いな、樹莉」

樹莉が身をよじると、亜紋は嬉しそうに目を細めて胸元に唇を潜り込ませる。

「やだ、亜紋さ……んっ」
「俺だけが知っている。こんなにとろけた顔で甘える樹莉を」
「甘えてな……、あっ、んん!」
「そんなに目を潤ませてるのに?」
「だって、亜紋さんが」
「俺が、なに?」

チュッと身体中にキスを浴びせながら、亜紋は樹莉の反応を楽しむようにチラリと視線を上げた。

樹莉は潤んだ瞳で亜紋を見つめる。

「お願い。これ……恥ずかしいから、ギュッて、して?」

頬を染めて吐息混じりに呟くと、亜紋は一瞬驚いたように目を見開いてから、指を解いて樹莉を胸に抱きしめた。

「樹莉、俺の可愛い樹莉……」
「亜紋さん」

樹莉も、ようやく解放された腕を亜紋の背中に回して抱きつく。

「樹莉、愛してる」
「私も、亜紋さん」

交わす言葉はそれが最後。
あとはただひたすら、込み上げる想いのままに互いを抱きしめ合っていた。
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