レディ・マーメイド
花開く春がやってきた。

3月から始まったフラワーエキスポは大盛況で、パレ・ド・フローラもロイヤルクレストも売り上げは好調。

そんな中、樹莉と亜紋の結婚式がロイヤルクレストで執り行われた。

ガーデンの中央に位置するチャペルに、陽の光が降り注ぐ。

まるで天からの祝福を受けるかのように、キラキラとした光の中を純白のウェディングドレスに身を包んだ樹莉がゆっくりと進んだ。

マーメイドラインのドレスに、見事な花の刺繍が施された長いマリアベール。

バージンロードを1歩1歩踏みしめるように歩く樹莉に、亜紋は思わず目を細めた。

神々しいほど美しく、触れるのもはばかられるほど清らかで……

そんな樹莉と結婚できることに、今更ながら胸が打ち震えるほど幸せを感じた。

「樹莉」

目の前にたどり着いた樹莉に呼びかけると、樹莉は顔を上げて優しく微笑む。

「樹莉、すごくきれいだ」
「ありがとう。亜紋さんも、とってもすてき」

シルバーグレーのタキシード姿の亜紋は、樹莉の手を取り、自分の腕に捕まらせてしっかりと握った。

二人で祭壇に上がると、厳かな賛美歌とオルガンの音が響く。

大切な人に見守られながら、変わらぬ愛を誓い、指輪を交換した。

やがて二人は、向かい合って見つめ合う。

「樹莉。最初は君を巻き込んで危険な目に遭わせてしまい、心が傷んだ。だけど今は、君と出逢えたことに心から感謝している。俺にたくさんの幸せをくれてありがとう。樹莉といれば、何気ない日常が幸せに満ちていると感じられる。ずっとそばにいてほしい。俺は生涯君を愛し、守り抜くから」

樹莉の瞳からきれいな涙が溢れた。

「私こそ。亜紋さん、いつも助けてくれてありがとう。あなたの大きな腕に守られて、愛されて、私は幸せを見つけることができました。身分も家柄も釣り合わない私を、ただ真っ直ぐに見つめてくれて、本当にありがとうございます。私も亜紋さんを幸せにしたい。ずっとずっと、あなたのそばで」
「樹莉がそばにいてくれる限り、俺は幸せだ。ずっと一緒にいよう」
「はい、亜紋さん」

微笑んで頷くと、亜紋は樹莉の肩に手を置き、ゆっくりと顔を寄せた。

目を閉じた樹莉の長いまつ毛が、幸せの涙で濡れる。

亜紋はたくさんの愛を込めて、樹莉に優しくキスをした。
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