失恋した夜、三白眼のエリート海上自衛官に恋しました
「笑った方がいい」
 木々が夜風に揺れる音に紛れるその言葉が、傷ついた私の心の奥をじんわりと温める。
「泣いてる顔より、こっちの方がいい」
 静かな海に、波音が響く。
 不意に放たれたその言葉に、どう反応していいかわからない。
 
「やめてください、そんな……」
「俺は嘘は言わない」
「……ありがとうございます。なんか元気が出ました」
 私はこの夜に出会った彼のことを、もっと知りたいと思っていた。
 失恋したばかりなのに。こんなことが許されるのだろうか。
「あの、お名前は?」
「俺か? 久瀬洋一」

 久瀬洋一。
 低い声で告げられたその名前が、なぜか胸に残る。
 失恋したばかりなのに。
 それなのに私は、もう少しだけこの人と話していたいと思ってしまった。
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