白い薔薇が花ひらくまで〜総合病院の跡取り令息のコレクション〜

1 ワンナイト

ル・ブラン、最上階。

スイートルームの窓いっぱいに、みなとみらいの夜景が広がっていた。
大理石のテーブルの白薔薇から、ひらりと花びらが落ちる。


「――君は、まるで白い薔薇のようだ……」


ベッドがきしむ音がする。

脱ぎ捨てられたスパンコールの施された純白のドレスが、横たわっている。

飲みかけのグラスワインに夜景の光が散っていた。
小さな星屑が沈んでいるようだった。


「本当に……いいんだね?」


キングサイズのベッドで、蕾は名前も知らない男を見上げていた。


「初めてが、僕で」


男性は静かに言った。


「はい……」


男性の喉仏が上下する。

銀縁のメガネを外し、蕾の顎に手を当てて、持ち上げた。


「目を閉じて、身体の力を抜いて」


低い声が耳元に落ちる。

蕾は白いシーツの中で身を任せながら、目を閉じた。

唇に柔らかな感触――と共に、男の首筋からアンバーの香りがほのかに漂う。

窓ガラスの二人のシルエットは重なり合い、一つに溶けていく。
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