白い薔薇が花ひらくまで〜総合病院の跡取り令息のコレクション〜
朝のやわらかな光に目覚めると、昨晩の男は夢のように跡形も残さずいなくなっていた。


「身体……重いなぁ」


二日酔いか、それとも。


スイートルームの窓から外を見下ろすと、人影が蟻のように行き交っていた。

横浜港には、豪華客船が停泊している。


「何だろう……?」


ふとサイドテーブルを見ると、1輪の白い薔薇がホテルのメモ帳に添えられていた。



佐伯玲司(さえきれいじ)
080 -××××-×××× 



丁寧な筆跡。
その繊細な字は小さくメモのはじに書かれている。


――君は、まるで白い薔薇のようだ……。


彼の言葉がよみがえる。


蕾は、乾いた笑いを漏らした。


一夜限りの関係――。アンバーの香りを思い出す。


メモを粉々に破り、ゴミ箱に捨てた。
即座に下着を身につけ、袖を通す。

鏡の中の首筋に、一点の紅が残っていた。
指先でそっと触れる。


「馬鹿な人…… 私はもう二度とあなたと夜は過ごさない」
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