君の余命に僕の初恋を捧ぐ
第一章:木漏れ日のなかの少年
中学校の教室は、いつもどこか騒がしい。
新しい制服に身を包んだクラスメイトたちが、それぞれのグループを作って浮き足立っている。
そんな喧騒のなかで、窓際の特等席に座る彼の周りだけは、まるで切り取られたように静かだった。
斎藤康太。それが彼の名前だった。
「斎藤くん、教科書見せてくれてありがとう」
「ううん、いいよ。気にしないで」
康太は振り返り、はにかむように笑った。
その笑顔はとても優しくて、だけど、どこか遠くを見ているような寂しさを孕んでいた。
小林日和が彼に恋を落としたのは、そんな何気ない日常のひとコマだった。
達観している、と言えば聞こえはいい。
けれど彼は時折、まるで自分の命の終わりを知っているかのような、ひどく冷めた、だけど愛おしそうな瞳で世界を見つめていた。
席替えをきっかけに、日和と康太は少しずつ言葉を交わすようになった。
一緒に図書委員の仕事をしたり、夕暮れの放課後、誰もいない教室でくだらない話をしたり。
康太はいつだって日和の話を嬉しそうに、一言も聞き漏らさないように聞いてくれた。
「日和ってさ、本当にひまわりみたいな人だよね。一緒にいると、暗い闇なんて全部消えちゃいそうになる」
「大げさだよ、康太くん。私はただ、康太くんと話すのが楽しいだけ」
そう言って笑い合う時間が、ずっとずっと続くのだと、日和は疑っていなかった。
彼が時折、こめかみを押さえて苦しそうに眉をひそめる理由も。
時々、昨日話したばかりのことを「あれ、そうだっけ?」と忘れてしまう理由も。
ただの寝不足か、うっかり屋さんなのだと、そう思いたかった。
あの残酷な現実を知ってしまう、その日までは。
新しい制服に身を包んだクラスメイトたちが、それぞれのグループを作って浮き足立っている。
そんな喧騒のなかで、窓際の特等席に座る彼の周りだけは、まるで切り取られたように静かだった。
斎藤康太。それが彼の名前だった。
「斎藤くん、教科書見せてくれてありがとう」
「ううん、いいよ。気にしないで」
康太は振り返り、はにかむように笑った。
その笑顔はとても優しくて、だけど、どこか遠くを見ているような寂しさを孕んでいた。
小林日和が彼に恋を落としたのは、そんな何気ない日常のひとコマだった。
達観している、と言えば聞こえはいい。
けれど彼は時折、まるで自分の命の終わりを知っているかのような、ひどく冷めた、だけど愛おしそうな瞳で世界を見つめていた。
席替えをきっかけに、日和と康太は少しずつ言葉を交わすようになった。
一緒に図書委員の仕事をしたり、夕暮れの放課後、誰もいない教室でくだらない話をしたり。
康太はいつだって日和の話を嬉しそうに、一言も聞き漏らさないように聞いてくれた。
「日和ってさ、本当にひまわりみたいな人だよね。一緒にいると、暗い闇なんて全部消えちゃいそうになる」
「大げさだよ、康太くん。私はただ、康太くんと話すのが楽しいだけ」
そう言って笑い合う時間が、ずっとずっと続くのだと、日和は疑っていなかった。
彼が時折、こめかみを押さえて苦しそうに眉をひそめる理由も。
時々、昨日話したばかりのことを「あれ、そうだっけ?」と忘れてしまう理由も。
ただの寝不足か、うっかり屋さんなのだと、そう思いたかった。
あの残酷な現実を知ってしまう、その日までは。