あの時間を忘れる方法が あるなら
「‥柊さん」

『ん?』

「私こそこんな素敵な柊さんを見られただけでもここに来て良かったと思ってます」

『うん‥‥‥』

腕の中から抜け出すと、振り返り満面の笑みで彼を見上げてそう伝えた

何故か少しだけ寂しそうに笑った柊さんだったが、すぐにいつものように優しい表情を見せてくれた

『そろそろ行こう。』

柊さんが私の手を取り自分の左腕に絡ませると、私も隣を見上げて小さく頷いた

平凡でどちらかと言えば目立つこともなく生きてきた自分にとっては、これはまさに制限時間付きのシンデレラストーリーだ

こんな世界があって、そんな世界で当たり前のように生きている人がここにいる‥

シンデレラもきっとこの夢のような時間の中で王子様と過ごしたはずだ

大きな扉を潜ると、目の前の華やかな空間に目が眩みそうになるけれど、歩く先々で覚えた知識を少しずつ出し、ただ柊さんに恥じないように凛として姿勢を正していた


『柊、ここにいたのね』

えっ?

柊さんが振り返ったので私もその背後からそちらを伺うと、美しい白のセットアップを着こなした女性の横に立つ女性を見てハッとした

この人‥って‥昨日家を訪ねてきた人だ‥‥

母くらいの年齢の美しい女性も目立つが、可愛らしくて美しさも兼ね備えた昨日の女性は、ドレスアップをしているものの見間違いることは
ない
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