この時間を忘れる方法があるなら
「社長、あちらで馬場様がお待ちです。」

柊さんがそう応対するなら、今の私に出来ることはしっかりと補佐をすることだ

このまま隠れているようでは、何のためにそばにいるのかわからない

今‥私だけは柊さんの絶対の味方でいないといけないとそう思えた

『聞こえましたか?生憎忙しくてね。では‥
失礼します』

タキシードを着こなす素敵な柊さんが美しくお辞儀を見せると、今にも怒鳴り声をあげそうな河越さんと泣きそうな真由香さんを背に私も柊さんに続いた

心臓の音が鳴り止まない‥‥

今だって、振り返ったそこにいる2人の視線を感じないわけじゃなかったから。

その後も柊さんの隣で多くの方に挨拶をしたりしながらもサポートをする間も、私の手はずっと彼の腕に絡められたまま離してもらえなかった




パーティーが終わったのに色々あり過ぎて眠れない私がリビングのソファでホットミルクを飲んでいると、お風呂上がりの柊さんが私の隣に腰掛けた

改めて仕事の補佐として、莉奈さんとして表舞台に立つ事の大変さを身をもって知った私は、今日の自分の出来が良かったのかさえ分からずにいた

ただ‥帰りの車の中でも私を気遣うように声をかけてくれていた柊さんにだけは申し訳なさと不甲斐なさが入り混じり胸が苦しくて、思い出すだけでも涙が出そうになる

やれる事にたくさん時間を割いて覚えて来たことも本番で役に立たなければ意味がない‥‥


『すまなかった‥』

えっ?
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