あの時間を忘れる方法が あるなら
今更だけど‥彼はとても背が高い‥‥

座っていたから気が付かなかったが、いざこうして目の前に立たれると158センチほどしかない私より30センチくらい大きく感じて見上げてしまう

『名乗ってなかったな。俺は川崎 柊だ。
ここ川崎グループの会長の息子とでも言えば伝わるだろうか?』

「‥はい‥なんとなくですが‥」

川崎グループと言えば、日本を拠点に連なる不動産業界のトップグループともいえる大企業だから私のような知識の少ない者でも聞いたことのある企業名だ

『フッ‥‥驚かないんだな‥』

えっ?

一瞬私を見て表情を緩めたかと思えば、次の瞬間スマホを操作した川崎さんが私にゆっくりとその画面を見せてきた

『佐々木さん』

「は、はい」

『君は今日から長浜 莉奈として生きてもらう。勤めていたバイトも全て辞めて俺の監視下のもと生活をしてここで働いてもらう。出来るか?』

長浜 莉奈‥‥
彼女が川崎さんが想いを寄せる大切な人‥‥

川崎さんのお母様に交際を反対され、許しを得ている状況下で莉奈さんが交通事故に遭い、意識不明となってしまった。

生命維持装置で命は繋いでいるものの、いつ目覚めるかは誰にも分からない

明日なのか何年も先なのかすら‥‥

画面に映る女性に視線を落とせば、何故自分が選ばれたのか嫌でも分かってしまった。

莉奈さんの方が少し大人びてはいるものの、私と双子のように顔立ちが良く似ていたのだ

「サインはしましたし、今更受けないなんて言いません。私にとって家族の存在は何よりも大切ですから‥‥。川崎さんにとって至らない点が多いと思いますがよろしくお願い致します」

普通だったらこんな事受けることなどしないが、彼がスマホの画面に向ける柔らかい表情だけは嘘ではないと思えたのだ
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