あの時間を忘れる方法が あるなら
私よりも大きな手は私の手を簡単に覆い、その手が私の右手の薬指に触れると、そこに細くて綺麗なピンクゴールドの指輪をそっとはめた。

『莉奈に渡す予定だった指輪だ。これを付けた以上、俺は君を大切に守ると誓う。だから君は安心して俺のそばで過ごしていればいい。』

莉奈さんの‥‥指輪?

川崎さんが彼女を想って送る指輪に何故か胸が締め付けられてしまい、それをすぐにそっと外して返した。

「想いが詰まった指輪は私には重過ぎます。これは目覚められた時に莉奈さんにはめてあげて下さい。‥‥私はそれがなくてもちゃんと勤めを果たしますから‥」

『‥‥‥‥そうか‥すまない』

川崎さんの手のひらにそれを置くと、書類に目を通す間も、川崎さんはそれ以上何も言ってこなかった。



『荷物はそれだけか?少ないな』

両親に暫く住み込みで働くことだけを伝えると、必要最低限の着替えなどを大きめの鞄に詰めると近くの公園に停まる車の運転手の方がご丁寧にドアを開けてくれた

「はい‥自分のものはそんなにないので」

高級車の後部座席に高級そうなスーツを着こなし優雅に座る川崎さんに対して、安物のカットソーとデニムのパンツ、少し汚れたスニーカーを履く私を見比べると申し訳ない気持ちが膨らむ

こんな人と関わることになるなんて今だに信じられないし、マナーだって本当に何も分からない‥

川崎さんは莉奈さんに顔が似ているだけで本当に私でいいと思っているのだろうか‥‥
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