ネックとプロポーズ
ほんのり甘い、和泉くんの香り。



「……瑠衣さん」



しまった、と我に返るのが遅かった。

あからさまに匂いを嗅いでいた。

大人の女は、きっとこんな失敗はしないのに。



「今、オレの首元匂わなかった?」



(バレた!?)



……引いた?

笑って誤魔化す?

真剣に魅力を伝える?

いやいや、何を言っても不正解でしょう……!



「あ……。そうだ、ごめん。これからオレ、出なくちゃならなくて」
と、和泉くんが何事もなかったかのように、時計を見た。



「えっ?」

「瑠衣さん、帰れる?」



和泉くんの笑顔に有無を言わさない、何かの圧力を感じて、黙って頷いた。

そして、何となく朝ごはんを一緒に食べて、パパッと身支度をして、一緒に和泉くんの部屋から出て…………。



「また連絡するね」
と、駅で和泉くんが言った。



……あれ?

あれ? あれ? あれ?



(なんかいつもと違う……)




首元の匂いを嗅ぐ変な女だって思われたのかな。
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