観覧車が止まった夜、片想いが動き出した
✴︎✴︎✴︎

地上に戻ると、冷たい夜風が頬を撫でた。
やさしく熱をおさめてくれて心地いい。

東雲さんが自販機で温かいココアを買ってくれた。
そばのベンチに並んで座る。

隣に座る東雲さんから、
冬の夜風の匂いと、ほんの少しだけ清潔な石鹸のような香りがした。

「それにしても……時任さん、無茶ぶりでしたね」

スマホを開いて、後で送る画像を確認した。

「時任さんと仲が良いよね」

ホットコーヒーを飲みながら東雲さんが言う。

「はい、すごくお世話になってます」

私は笑顔でうなずいた。

「私のことを、娘にそっくりって言うんです。
娘さん、中学生ですよ? 一回りも歳が違うのに」

思い出して、吹き出してしまう。

「俺もよく、甥っ子みたいだと言われたな」

私たちは笑い合った。

いつの間にか、お互いの最寄り駅や休日の話になって。
会社では知らない話が自然に続いていく。

気付くとさっきよりも肩が触れ合うほどの距離になっていて、恥ずかしくなった。
でも、離れたいと思えなくて。
今なら、夜のおかげで、顔の熱もごまかせている気がした。
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