限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 本当はギャレット様の母君より、私が一年間婚約者の席を埋めていれば、幼い弟クインの侯爵位は安泰となり、放蕩者の父が賭け事で作った巨額の借金を全額返済し、それに……私には婚約者でなくなった後の裕福な嫁ぎ先までも用意してくれると、約束して頂いたからです。

 もうこれ以上、どうしようもないほどに袋小路に追い詰められていた我がメートランド侯爵家にとって……掴むという選択肢しかなかった、たった一本の命綱だったんです。

「そうだろう……だからこそ、俺の両親とて、君が俺の婚約者に最適であると判断したんだ」

 ギャレット様は立ち止まり、私の右手を両手で取った。彼の温かくて大きな手はざらりとしていて、固い剣だこが出来ていた。

 なんでも、彼は護衛に守られるべき王族には珍しいほどの剣の名手で『雷の子』と呼ばれているらしい。年に一度開かれる闘技大会でも、毎回優勝を攫っている。

 無心になって剣の稽古をしていたから、大国のお姫様との待ち合わせ時間に遅れてしまったという逸話は有名だ。

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