限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 頭をかいたガレスは自分が彼女の元へ行っても良いと、言外に含ませた。

 もし何処かに誰かの目があれば、婚約者と言えど異性とこんな深夜に密かに会っていると思われれば良くないだろう。まだ未婚の彼女の評判に、関わってしまう。

 無責任な噂は、いくらでも悪意を持つ。誰か侍女を呼んでも良いが、ここで隠れて泣いているくらいだ。誰にも知られたくは、ないんだろう。

「いや、ガレス……俺の部屋から、月琴を持って来てくれ。もしかしたら、窮状にあると言うメートランド侯爵家で、何かあったのかもしれない。婚約者と言えど、まだ間もない。良く知らない男に、家族の辛い事情を説明させてしまうのも可哀想だ」

「ああ……すぐに持ってこよう。久しぶりじゃないか。あれを弾くのは」

 似合わないのに可愛い楽器を弾くのだとガレスは揶揄うようにそう言って、俺の宮へと走って行った。

 王太子妃となる彼女の宮も、ほど近い。

 だが、宮の中には侍女も居るだろうし、抜け出してこんな所で泣いているとは。

 ガレスに持って来て貰った月琴を持って、俺は物陰に隠れて演奏を始めた。

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