聖女の力のない令嬢の織った布に、冷徹公爵は恋をした。




「リディア」

「はい」

「あなたに、聞きたいことがある」


 リディアは棚から手を離して、アルシェの方を向いた。心臓が、静かに速くなっていく。


「……なんでしょう」

「私はあなたのことを」


 アルシェは真っすぐリディアを見たまま言った。いつものように、逸らさずに目をみる。


「最初は同じ場所に立つ人間だと思った。次第に、一緒にいたいと思うようになった。今は」


 彼は一歩、リディアの方へ歩いた。


「あなた以外のことが、考えられなくなっている」


 リディアは息を止めた。

 工房の中が、静かだった。外では鳥の声がして、夕風が木々を揺らしていた。それ以外は、何も聞こえなかった。

「これを恋だと呼ぶのなら」


 アルシェは続けた。その声は低く静かで、だが一言一言が確かな重さを持っていた。


「そうなのだと思う。うまい言い方を私は知らない。だが、あなたのそばにいたい。あなたの作るものを、一番近くで見ていたい。あなたが傷つくときに、隣にいたい」


 リディアの目が、熱くなった。

 泣かない、と思った。茶会の日と同じように思った。だが今回は、意味が違った。嬉しくて泣きそうなのだ。悔しくて堪えているのとは全然違う。




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