聖女の力のない令嬢の織った布に、冷徹公爵は恋をした。
「……閣下」
リディアは低く、二人にしか聞こえない声で言った。
「なぜ私をご招待なさったのですか」
アルシェはすぐには答えなかった。音楽に合わせて、ゆったりとステップを踏みながら。
「糸を見た」
「糸、ですか」
「一月前、王宮の展示に、ユーリホキラスの絹布が出ていた。聖なる力で織られたものではない、普通の糸で織られた一枚だけが別の美しさを持っていた」
リディアの手を握る指に、わずかに力が込もった。
「誰が織ったか調べたら、あなただった」