ライオンのサーカス
花壇の前庭を抜けて、不思議な形の昇降口から校舎へ入る。
階段を登って教室に入って行くと、カナトとシロウはもう先に着いてモネを待っていた。
窓際に寄りかかったカナトは杖先からいつもの様に小さな火の粉を出している。
モネの幼なじみでフィアンセのカナトの魔法の属性が火で、得意な魔法が火に関係している事は、クラスの人なら誰でも知っている常識だった。
「おはよう、モネ」
「おはよう、カナト」
モネが次の言葉を言いかけるか言いかけないかのうちに、横からシロウが割り込んだ。
「おはよう、モネ。今朝はいい天気だね」
「おはよう、シロウ」
「こんな日は、どこかに出かけたくならない?。運転手を呼んであるから、2人でドライブに行こうよ。」
シロウは杖からそよ風を出して、にっこり笑ってモネの前髪に当てた。
シロウの魔法属性は風で、得意な魔法は風に関係しているのである。
カナトがふんと鼻を鳴らした。
「シロウ、いい加減僕達の邪魔をするのを辞めないと痛い目見るよ。モネは今日は、僕と僕んちの車で出掛けるんだ。用意させたばかりの外国車でね。なんて言ったって、僕はモネの幼なじみのフィアンセだからね。」
「腹立つ。モネのフィアンセは僕だ。貴族会で許可も貰ってる。いつもいつも幼なじみを自慢して。その火の粉、出すのやめろよ。火の属性もいつも自慢にして。暑苦しいだけだって、なんで分からないんだか。」
「男の魔法属性で一番は火だ。モネ、火の男と風の男、どっちが男っぽいと思う?」
「むかつく。風には風の良さがあるんだ。前にモネも風の方が爽やかで良いって言ってた。だよね?モネ。」
どちらとも言いかねたモネは首を横に振った。
この三角関係を、どうしたら良いのか、モネにはまだ良く分からない。
シロウが言った。
「大体、貴族会の貴族命令を聞かない商人なんて。図々しいったらないね。自分をなんだと思ってるんだか。」
「一般的に、偉いのは豪商の金持ちだ。生まれが良いだけの貴族が何を言ったって関係ない。貴族命令なんて知ったこっちゃないね。」
「ムカつく。貴族命令を返すなら、お前んとこ、この先もう貴族連との取引はできなくなるよ。それでも良いんならね。」
「構うもんか。裏ルートならいくらでもある。お前の家のちっぽけな貴族権位、どうにでもなるんだ。大して金もないくせに偉そうに。そっちこそ、立場を弁えろよ。」
カナトがそう言い返した所で、授業の開始を告げるチャイムが鳴った。