ライオンのサーカス

 



 ある日、モネとカナトは、近所の公園に苺詰みに来ていた。

 麦わら帽子を被ったモネは、公園の木の下の一角にシートを引いて、カナトが家のコックに準備させた特製のお弁当を摘んでいた。


「こういう所でのデートは、精神的だね。」


 シートに寝そべって唐揚げを摘みながら、カナトが言った。


「明るくて爽やかで。夜に外で会うのもロマンチックだけど、僕は昼間会う方が好きだ。───ほら。」


 カナトは上から自分を覗き込むモネの頬に軽く触れた。


「お前の顔も日の光でこんなに綺麗に見える。二人っきりって、こういう時を言うんだね。春のピクニックほど楽しい物はない、僕は誓えるな」



 しばらく経って、カナトがトイレに立ったので、モネは、座り込んだまま上を見上げた。

 空は青く、雲は白く、今日がピクニック日和であることを見事に示している。

 モネがふと下を向いた瞬間、大きく風が吹いて、モネの被っていた麦わら帽子を落とした。

 麦わら帽子は、くるりと回転すると、ふうわりと風に乗り、気がついた時にはシートの上の木のてっぺんに引っ掛かっていた。



 麦わら帽子は、今年の春シロウにプレゼントされたものだった。

 帽子には海老茶色のリボンがかかっていて、つばは浅めで、被るとモネの髪によく映える薄いベージュ色をしていた。

 シロウは帽子をくれる時、モネに帽子を被せて、
 
「モデルみたいだね。僕のモデルさん。可愛い」

 と言って笑った。


 と、その帽子が、今てっぺんに引っ掛かっているのである。


 モネは立ち上がると、お弁当の蓋を開けたまま、ちょっと迷っていたがすぐ、腕に力を入れて帽子の木に登り始めた。




< 29 / 60 >

この作品をシェア

pagetop