君の隣。 〜一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、出会って10年、ずっと私だけを思い続けてくれた「親友の元彼」でした〜
運命のはじまり
遠回りのプロローグ
――もしあの時、あんなに深く、あの人を愛さなければ。
裏切りと、逃げ場のない暗闇の底にいた私を最後に救ってくれたのは――。
別の誰かと付き合っても、出会って10年もの間、ずっと私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした。
これは、長い迷路を歩き続け、私がようやく本当の愛を見つけるまでの軌跡。
――*――*――
章 運命のはじまり
今日から、高校生。
新しいセーラー服に袖を通すと、パリッとした生地の硬さが肌に触れて、ほんの少しだけ背筋が伸びる気がした。
それでも、玄関でローファーに足を押し込む私の足取りは、ひどく重かった。
理由はひとつ。付き合ってまだ三ヶ月の彼氏、雅人(まさと)と、別々の高校に通うことになったからだ。
彼が進むのは工業高校。野球部に入ると言っていたから、きっと毎日クタクタになるまで白球を追うのだろう。
私の名前は、下崎柚那(しもざき ゆずな)。
中学ではハンドボール部の副キャプテンで、誰よりも大きな声でチームを引っ張っていた。そんな私が朝から湿った顔をしているなんて、自分でも似合わないと思う。
「柚那、おはよー! ついに高校生だね!」
途中の角で待っていたのは、小学校からの幼なじみ、真美(まみ)。
明るい声に、私は無理やり口角を上げた。
桜並木の下を、二人で自転車を並べて走る。花びらが風に舞っても、視界の端にはどうしても雅人の笑顔がチラついた。
ーーーーーーーーーー
教室は1年6組。真美とは離れてしまい、私は一人で扉を開けた。
すでにいくつものグループができていて、「どこの中学?」「LINE交換しよ!」と声が飛び交っている。完全に出遅れだ。
心細さをごまかすように、雅人にLINEを打つ。
『真美とはクラス離れちゃった。仲良くなれそうな子、今のところいないなー……』
送信した、まさにその瞬間。
「おはよう! 私、遥(はるか)! どこの中学?」
後ろの席から、ひまわりみたいな笑顔の女の子が身を乗り出してきた。
張りつめていた糸が、ふっと緩む。……この子となら、やっていけそうだ。
遥と並んで体育館へ向かう廊下で、ふと、前を歩く男子の列に視線を引き寄せられた。
すっきりとした坊主頭。頭ひとつ分は飛び抜けた背の高さに、遠目にも分かる整った横顔。
(野球部かな……?)
大勢の中でも、そこだけ空気が違って見えた。近くにいた女子たちが、「ねえ、あの人かっこよくない?」と小声で囁き合っている。
雅人も野球部だけれど、私より背が低くて、愛嬌のあるタイプ。同じ坊主頭なのに、こんなにも雰囲気が違うんだ――と、ぼんやり思っただけだった。
ーーーーーーーーーー
その夜、雅人から返信が届いた。
『おつかれー。仲良くなれる友達ができたらいいね。俺のところは男子ばっかだよ(笑)』
思わず、ふふっと笑みがこぼれる。
中学の卒業式の帰り道、照れながら交わした約束を思い出した。
「高校に行って目移りするなよー?」
「雅人こそ、浮気しないでね?」
冗談めかして笑い合ったけれど、私は彼を疑うことなんて、一度も思いつかなかった。
その夜、布団に入ってからふと、昼間の男の子の背中が浮かんだ。
……どうして、名前も知らない人のことなんて。
思わず目を奪われたのは、きっと、雅人とは正反対の印象だったからだ。
私はそう思いながら、そのまま目を閉じた。
裏切りと、逃げ場のない暗闇の底にいた私を最後に救ってくれたのは――。
別の誰かと付き合っても、出会って10年もの間、ずっと私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした。
これは、長い迷路を歩き続け、私がようやく本当の愛を見つけるまでの軌跡。
――*――*――
章 運命のはじまり
今日から、高校生。
新しいセーラー服に袖を通すと、パリッとした生地の硬さが肌に触れて、ほんの少しだけ背筋が伸びる気がした。
それでも、玄関でローファーに足を押し込む私の足取りは、ひどく重かった。
理由はひとつ。付き合ってまだ三ヶ月の彼氏、雅人(まさと)と、別々の高校に通うことになったからだ。
彼が進むのは工業高校。野球部に入ると言っていたから、きっと毎日クタクタになるまで白球を追うのだろう。
私の名前は、下崎柚那(しもざき ゆずな)。
中学ではハンドボール部の副キャプテンで、誰よりも大きな声でチームを引っ張っていた。そんな私が朝から湿った顔をしているなんて、自分でも似合わないと思う。
「柚那、おはよー! ついに高校生だね!」
途中の角で待っていたのは、小学校からの幼なじみ、真美(まみ)。
明るい声に、私は無理やり口角を上げた。
桜並木の下を、二人で自転車を並べて走る。花びらが風に舞っても、視界の端にはどうしても雅人の笑顔がチラついた。
ーーーーーーーーーー
教室は1年6組。真美とは離れてしまい、私は一人で扉を開けた。
すでにいくつものグループができていて、「どこの中学?」「LINE交換しよ!」と声が飛び交っている。完全に出遅れだ。
心細さをごまかすように、雅人にLINEを打つ。
『真美とはクラス離れちゃった。仲良くなれそうな子、今のところいないなー……』
送信した、まさにその瞬間。
「おはよう! 私、遥(はるか)! どこの中学?」
後ろの席から、ひまわりみたいな笑顔の女の子が身を乗り出してきた。
張りつめていた糸が、ふっと緩む。……この子となら、やっていけそうだ。
遥と並んで体育館へ向かう廊下で、ふと、前を歩く男子の列に視線を引き寄せられた。
すっきりとした坊主頭。頭ひとつ分は飛び抜けた背の高さに、遠目にも分かる整った横顔。
(野球部かな……?)
大勢の中でも、そこだけ空気が違って見えた。近くにいた女子たちが、「ねえ、あの人かっこよくない?」と小声で囁き合っている。
雅人も野球部だけれど、私より背が低くて、愛嬌のあるタイプ。同じ坊主頭なのに、こんなにも雰囲気が違うんだ――と、ぼんやり思っただけだった。
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その夜、雅人から返信が届いた。
『おつかれー。仲良くなれる友達ができたらいいね。俺のところは男子ばっかだよ(笑)』
思わず、ふふっと笑みがこぼれる。
中学の卒業式の帰り道、照れながら交わした約束を思い出した。
「高校に行って目移りするなよー?」
「雅人こそ、浮気しないでね?」
冗談めかして笑い合ったけれど、私は彼を疑うことなんて、一度も思いつかなかった。
その夜、布団に入ってからふと、昼間の男の子の背中が浮かんだ。
……どうして、名前も知らない人のことなんて。
思わず目を奪われたのは、きっと、雅人とは正反対の印象だったからだ。
私はそう思いながら、そのまま目を閉じた。