君の隣。 〜一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、出会って10年、ずっと私だけを思い続けてくれた「親友の元彼」でした〜

揺らぐ信頼


高校生活にも少しずつ慣れてきた頃、私は雅人との関係に、人知れず頭を悩ませていた。

LINEを送っても、既読がつかない日が増えていたのだ。

入学直後に数回会えたきり、顔を合わせる日さえなくなっていた。

雅人は、入学前から言っていた。

『入部したらどうしても忙しくなって、寂しい思いをさせるかも。そのときはごめん』

だから私は、連絡が来ないのも、会えないのも、全部部活のせいなんだと言い聞かせていた。

雅人が私を大切にしてくれていることは、誰よりも私が知っているはずだから。

ーーーーーーーーーー

そんなある日、久しぶりに中学時代の友人、由紀に会った。

恋愛のことも、それ以外のことも、何でも相談してきた大切な友達だ。

最初は他愛のない近況報告だった。けれど由紀が、ふと口ごもって視線を落とす。

「あのね……今日は、柚那に話しておかなきゃいけないことがあって」

低いトーンに、心臓が嫌な音を立てた。

「最近……雅人とどう? ちゃんと会えてる?」

「実はちょうど今日、聞いてもらおうと思ってたの。LINEがなかなか既読にならなくて、部活が忙しいのかなって……」

そう言って顔を上げると、いつも「うん、うん」と頷いてくれる由紀が、困ったような、苦しそうな顔をしていた。

「……柚那、落ち着いて聞いてね」

由紀の高校の同級生が、友達とカラオケに行ったときのこと。

声をかけてきた男子グループと一緒に盛り上がり、みんなでプリクラを撮ったという。

後日、その同級生が見せてくれた一枚。

そこに写っていたのは――見間違えるはずのない、よく知っている男の子の顔。

雅人だった。

しかも彼は、グループにいた女の子の一人と、親しげに寄り添っていた。今は付き合っているらしい、とも。

「……っていう話を聞いちゃって。柚那……大丈夫? ほんとなのかな……」

由紀の声が、遠くで響いているようだった。

(え……?)

頭が真っ白になって、言葉の意味を理解するのに時間がかかる。雅人が、私じゃない女の子と? そんなの、ありえない。

「そう、なんだ。教えてくれてありがとう。一度、雅人とちゃんと話してみるね」

必死に顔の筋肉を動かして、いつものように笑ってみせた。由紀の前でだけは、絶対に泣きたくなかったから。

ーーーーーーーーーー

由紀と別れて一人になった瞬間、張りつめていた糸が切れた。

夕暮れの帰り道、涙が溢れて止まらない。

出会いなんてないと思っていた工業高校。部活が忙しいだけだと、あんなに信じていたのに。

どうして? という言葉が、頭の中で何度もループする。

夜、自分の部屋でスマホを握りしめた。

早く、雅人に聞かなきゃ。

けれど――。

(もし、本当に浮気していたら……?)

その考えが頭をよぎるたび、指が動かなくなる。

それでも、震える指で短く送った。

『今、忙しいかな? 連絡待ってます』

その夜、スマホが震えることは、なかった。
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