君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

信じたいから、少しだけ

新太と付き合うことになって、私は美波に、新太は勇斗に、それぞれ報告をすることになった。

私は家に帰ってすぐ、ベッドに転がりながらスマホを開いた。

『美波ー! LINEでごめん。わたしたち、付き合うことになったよ!! いろいろ話聞いてくれてありがとね』

送信してすぐ、いつも通り美波から返信が届く。

『おつかれー! うん!うん!よかったね!おめでとう!!』
『また何かあったらいつでも話聞くからね!!』

いつもと変わらない、明るくて優しい美波の文面。
だけど、あの部活の前に美波が言った「勇斗には話してないの?」という言葉が、なぜだか再び脳裏をよぎった。

ーーーーーーーーーー

それから数日後。

私は付き合って初めて、新太の家に遊びに行くことになった。

前にみんなで王様ゲームをした時はあんなに賑やかだった部屋なのに、二人きりでお邪魔するとなると、全く違う場所のように思えてしまう。

ほんのり漂う新太の香りに、私の心臓は朝からずっとうるさいくらいに跳ねたままだ。

並んで座って、ゲームをしたり、他愛もない話をしてひとしきり笑い合う。

けれど、ふと会話が途切れた瞬間、新太の手が私の頬にそっと触れた。

「柚那……」

名前を呼ぶ新太の、いつもより少し低い声。

じっと私を見つめる真剣な目に、あの日公園で告白されたときの記憶が蘇る。
ゆっくりと顔が近づいてきて、私たちは自然に唇を重ねた。

優しくて、あったかいキス。

新太の体温がダイレクトに伝わってきて、胸の奥がぎゅっと切なくなる。

けれど、新太の腕にそっと抱きしめられ、そのままベッドの方へ引き寄せられそうになった瞬間――。

(……女たらし)
(経験豊富で、かなり遊んでるらしいよ)

脳裏に、あの王様ゲームの時に美波が言った言葉や、学校での新太の噂が突然フラッシュバックした。

新太を信じたい気持ちはある。
でも、もし彼にとってこれが「いつもの慣れた流れ」だとしたら? 私だけが本気になって、いいように遊ばれてしまったら――。

急に怖くなって、私は思わずギュッと体を硬くして、新太の胸を小さく押し返してしまった。

「……柚那? 嫌だった?」

新太がすぐに動きを止め、心配そうに私の顔を覗き込む。
その瞳には、からかうような色は一切なくて、ただ純粋に私を気遣う優しさだけがあった。

私はきゅっと唇を噛み締め、意を決して新太の服の裾を握りしめた。

「……嫌じゃない、けど。私、その……こういうのは初めてだから、怖くて……。だから、私の心の準備ができるまで、待ってほしい」

恥ずかしさで顔がはち切れそうになりながら、消え入りそうな声で伝える。

新太みたいな人が、こんな私のワガママを許してくれるだろうか。

一瞬の沈黙のあと、新太はハッとしたように目を見開いた。そして、すぐに困ったように、でも愛おしそうに眉を下げて笑った。

「そっか。……ごめん、怖がらせて。分かった、柚那のペースに合わせる。柚那が本当にいいよって言ってくれるまで、俺、ちゃんと待つから」

そう言って、新太は私の頭を優しくぽんぽんと撫でてくれた。

その手の温もりに、私の頑なだった不安は、すうっと溶けていくようだった。

この人なら、ちゃんと信じても大丈夫かもしれない。

新太への「好きになれるかもしれない」という予感が、少しずつ確かなものへ近づいていくのを感じていた。
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