君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
秘密の重み
あの初めての部屋デートから、楽しかった夏休みも、もうすぐ終わりを告げようとしていた。
新太はあの日部屋で交わした約束を、本当にただ実直に守ってくれていた。
私に一切のプレッシャーをかけることなく、いつだって優しく、私のペースを一番に考えて隣にいてくれる。
新太への「好きになれるかもしれない」という予感は、この1ヶ月で、少しずつ確かなものへと近づいていた。
そんなある日の夕方、私は新太と2人で買い物に出かけた。
夏休み中、たまにある体育祭の練習や学園祭の準備。その買い出しの係になった新太に、私がなんとなくついていく形だった。
その帰り道、夕日に照らされた道を、買ったものの入った袋を手に持って並んで歩く。
ふと隣を見ると、今日の新太はいつになく口数が少ない。
いつもなら楽しい話で私を笑わせてくれるのに、どこか遠くを見つめたまま、何かを深く考え込んでいるようだった。
沈黙のまましばらく歩いたあと、新太がふと足を止め、真面目な顔になってポツリと口を開いた。
「……なぁ、柚那。実はさ、まだ勇斗に、俺たちが付き合ったこと話せてなくてさ」
「えっ? そうなの?」
思わず、驚きで声を上げてしまった。
付き合ったあの日、「私は美波に、新太は勇斗に報告しよう」とそれぞれ決めていた。
私はすぐに美波にLINEを送ったけれど、新太はまだ言っていなかったんだ……。
(あ……だからか……)
その瞬間、胸の中にあった小さな違和感がストンと腑に落ちた。
付き合ってからのこの1ヶ月、勇斗とはたまに他愛もないLINEを送り合ってはいたけれど、「おめでとう」の一言は一度もなかった。
ずっと不思議に思っていたけれど、新太がまだ話していなかったのなら、勇斗がその話題に触れてこないのも当然だ。
でも、あんなに仲の良い親友なのに、どうして今まで言えなかったんだろう。
新太は少し気まずそうに視線を落すと、小さくため息をついた。
「うん。……まあ、それには、ちょっと理由があってさ……」
そう言って新太が静かに語り出したのは、私にとっては信じられないような内容だった。
それはまだ、夏休みに入る前のこと。
ちょうど、みんなで新太の家に集まって、あの王様ゲームをしたあたりの時期だったという。
学校の放課後、教室で新太と勇斗の2人きりで話をしていた時のこと。
お互いの「好きな人」の話題になった時、いつもはふざけてばかりの勇斗が、真剣な目でこう言ったらしい。
『……俺、柚那のことが好きなんだよ』
新太は、心臓が止まるかと思うくらい驚いた。
『え……勇斗もか……。実は俺も、柚那のこと気になってる』
お互い、全く同じタイミングで、同じ女の子を好きになってしまっていた。
その事実を、2人はその時に初めて知ったのだと新太は言った。
「だからさ……」
新太はどこか苦しそうな表情で、言葉を絞り出す。
「俺が柚那と付き合えたって報告することがさ、あいつをめちゃくちゃ傷つけることになるんじゃないかって、どうしても思っちゃって……。勇斗の気持ちを知ってるからこそ、なんて言えばいいか分からなくて、まだ言えてないんだ」
新太の口から次々と溢れ出す言葉が、頭の中でうまく処理できない。
勇斗が、私のことを好き……?
大切な男友達のひとりだと、ずっとそう思っていた勇斗が?
(……勇斗には、話してないの?)
あの部活の前に美波が言った言葉が、鮮明に脳裏に蘇る。
美波は知っていたんだ。
勇斗が私のことを好きだって知っていたから、あんなに複雑な顔をしていたんだ。
夕暮れの静かな空気の中で、私はただあっけにとられたまま、激しくドクドクと脈打つ自分の心臓の音を聴いていた。
新太はあの日部屋で交わした約束を、本当にただ実直に守ってくれていた。
私に一切のプレッシャーをかけることなく、いつだって優しく、私のペースを一番に考えて隣にいてくれる。
新太への「好きになれるかもしれない」という予感は、この1ヶ月で、少しずつ確かなものへと近づいていた。
そんなある日の夕方、私は新太と2人で買い物に出かけた。
夏休み中、たまにある体育祭の練習や学園祭の準備。その買い出しの係になった新太に、私がなんとなくついていく形だった。
その帰り道、夕日に照らされた道を、買ったものの入った袋を手に持って並んで歩く。
ふと隣を見ると、今日の新太はいつになく口数が少ない。
いつもなら楽しい話で私を笑わせてくれるのに、どこか遠くを見つめたまま、何かを深く考え込んでいるようだった。
沈黙のまましばらく歩いたあと、新太がふと足を止め、真面目な顔になってポツリと口を開いた。
「……なぁ、柚那。実はさ、まだ勇斗に、俺たちが付き合ったこと話せてなくてさ」
「えっ? そうなの?」
思わず、驚きで声を上げてしまった。
付き合ったあの日、「私は美波に、新太は勇斗に報告しよう」とそれぞれ決めていた。
私はすぐに美波にLINEを送ったけれど、新太はまだ言っていなかったんだ……。
(あ……だからか……)
その瞬間、胸の中にあった小さな違和感がストンと腑に落ちた。
付き合ってからのこの1ヶ月、勇斗とはたまに他愛もないLINEを送り合ってはいたけれど、「おめでとう」の一言は一度もなかった。
ずっと不思議に思っていたけれど、新太がまだ話していなかったのなら、勇斗がその話題に触れてこないのも当然だ。
でも、あんなに仲の良い親友なのに、どうして今まで言えなかったんだろう。
新太は少し気まずそうに視線を落すと、小さくため息をついた。
「うん。……まあ、それには、ちょっと理由があってさ……」
そう言って新太が静かに語り出したのは、私にとっては信じられないような内容だった。
それはまだ、夏休みに入る前のこと。
ちょうど、みんなで新太の家に集まって、あの王様ゲームをしたあたりの時期だったという。
学校の放課後、教室で新太と勇斗の2人きりで話をしていた時のこと。
お互いの「好きな人」の話題になった時、いつもはふざけてばかりの勇斗が、真剣な目でこう言ったらしい。
『……俺、柚那のことが好きなんだよ』
新太は、心臓が止まるかと思うくらい驚いた。
『え……勇斗もか……。実は俺も、柚那のこと気になってる』
お互い、全く同じタイミングで、同じ女の子を好きになってしまっていた。
その事実を、2人はその時に初めて知ったのだと新太は言った。
「だからさ……」
新太はどこか苦しそうな表情で、言葉を絞り出す。
「俺が柚那と付き合えたって報告することがさ、あいつをめちゃくちゃ傷つけることになるんじゃないかって、どうしても思っちゃって……。勇斗の気持ちを知ってるからこそ、なんて言えばいいか分からなくて、まだ言えてないんだ」
新太の口から次々と溢れ出す言葉が、頭の中でうまく処理できない。
勇斗が、私のことを好き……?
大切な男友達のひとりだと、ずっとそう思っていた勇斗が?
(……勇斗には、話してないの?)
あの部活の前に美波が言った言葉が、鮮明に脳裏に蘇る。
美波は知っていたんだ。
勇斗が私のことを好きだって知っていたから、あんなに複雑な顔をしていたんだ。
夕暮れの静かな空気の中で、私はただあっけにとられたまま、激しくドクドクと脈打つ自分の心臓の音を聴いていた。