君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

勇斗の優しさ

「……そっ、か……」

私は小さく息を吐き出しながら、胸の中にあるザラついた引っかかりを、そのまま新太に伝えた。

「勇斗が、私のことを……。全然、気づかなかった……」

夕暮れの光の中、繋いでいる新太の手に、自然とギュッと力が入ってしまう。

「……ねえ、新太。新太が勇斗を傷つけたくないって思う気持ち、わかるよ。でも……このまま何も言わないのって、勇斗を騙してるみたいで、なんか嫌だな」

新太と勇斗。

あんなに仲のいい2人が、私のせいで気まずくなってしまうのだけは絶対に嫌だった。

私の言葉を聞いて、新太はハッとしたように目を見開いた。
しばらく夕空を見上げていた新太は、やがて繋いでいる私の手を、包み込むように優しくキュッと握り返した。

「……そうだな。俺、勇斗を傷つけたくないって言い訳して、自分が気まずいことから逃げてただけかもしれない」

新太はまっすぐに私を見つめ、少し苦笑いしながら言った。

「心配かけてごめん。近いうちに、ちゃんと勇斗と話してくるよ」

新太の誠実な言葉に、私はようやくホッとした。

ーーーーーーーーーーーーー

それから、楽しかった夏休みも残り2日になった、ある日のこと。

部屋で机に向かっていたとき、スマホが短く震えた。画面を見ると、勇斗から1通のLINEが届いていた。

『おつかれ! 元気にしてた? 最近部活でも会わなかったな』

『ちょっと前に新太と会って、全部聞いたよ。付き合ったんだってな、おめでとう!』

『俺の気持ちが柚那にバレちゃったのはちょっと格好悪いけど(笑)、新太が「柚那に心配かけた」って凹んでたからさ。柚那に変な気を使ってほしくなくて連絡した』

『だから柚那も、今まで通り俺に接してよ。なんなら相談にも乗るし、男目線の意見も必要だろ?(笑)』

『とりあえず、これからも今まで通り4人でたくさん遊びに行こうな!』

画面に並ぶ文字を読んでいるうちに、視界がじんわりと滲んできた。

勇斗が、私のためにこんなふうに気を遣って、明るく言葉を選んでくれている……。
そのことが、たまらなく温かくて、胸がぎゅっと締め付けられるようだった。

私は画面がぼやけるのを感じながら、必死に指を動かして返信を打ち込んだ。

『ありがとう。勇斗から連絡もらうまで、これからどうしたらいいか色々心配だったけど……安心した。ありがとね』

『またこれからも、4人でたくさん出かけたりしようね』

送信ボタンを押すと、胸の奥を重く占めていたモヤモヤが、すうっと消えていくのが分かった。

勇斗が自ら繋ぎ止めてくれたおかげで、私の気持ちは救われ、本当に楽になった。

そこからの残り2日間の夏休みは、あっという間に過ぎ去っていき。
私たちは少しだけ大人になって、2学期を迎えた。
< 22 / 48 >

この作品をシェア

pagetop