君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

静かな部屋

新太の両親も起きてきて、空がだんだんと白み始めた。そろそろ日の出を迎える頃。

気づけば私たちの周りにいるキャンパーたちも、みんな一斉にカメラを構えてその瞬間を静かに待っている。

冷え切った静寂の中、ゆっくりと山頂から太陽が顔を出し始めた。

強烈な光が富士山の真上へとさしかかり、ぴったりと重なったその瞬間――。

それは、本当に大粒のダイヤモンドが眩しく輝き出したかのような、奇跡的な光景だった。

「息を呑むような美しさ」って、きっとこういうことなんだ。

ただただ圧倒されて、私は言葉を失っていた。視界のすべてが、黄金色のまばゆい光に包まれていく。

日の出が山頂に重なる時間はほんのわずかで、きらきらとした輝きはすぐに形を変えていってしまったけれど。
私の胸には、生涯消えないであろう感動がしっかりと焼き付いていた。

「……こんなに貴重な瞬間、連れてきてくれて本当にありがとう」

私が隣を向くと、新太は眩しそうに目を細めながら、愛おしそうに優しく微笑んだ。

「すごいきれいだったな! 柚那と一緒に見られて本当によかった。……また来年も、絶対に一緒に来ような」

「うん、来ようね」

新太と、そんな小さな約束を交わした。

ずっとずっと、この幸せが続いてほしい。心の底からそう願うくらい、最高の夏の思い出になった。

ーーーーー

楽しかった一泊二日のキャンプから無事に帰宅し、日常に戻ってから数日後のこと。

今日は新太と会う約束をしていた。

私たちにとって少しだけ特別な、付き合ってちょうど三ヶ月の記念日。

大袈裟なことはしないけれど、二人でケーキを買って、新太の家で小さくお祝いしようと決めていたのだ。

待ち合わせ場所に現れた新太は、私を見つけるといつものように嬉しそうに駆け寄ってきた。

ショッピングモールで一緒に雑貨を見たり、少し遅めのランチを食べたり。

記念日だからといって変に気負うこともなく、隣を歩く新太の歩幅はいつも通り優しくて心地よかった。

帰り道、新太の家の近くにあるケーキ屋さんに立ち寄る。

ショーケースに並んだ色とりどりのケーキを前に、「どれにする?」と二人で身を寄せ合って覗き込んだ。

「俺、このチョコのやつ」

「じゃあ私は、こっちのイチゴのタルトにする!」

他愛のないやり取りさえも、なんだかくすぐったくて愛おしい。

三ヶ月前、付き合い始めた頃は「本当にこのまま進んでいいのかな」と一人で悩んでいたのが嘘みたいだ。

新太の飾らない優しさにたくさん触れて、今の私の気持ちは、確かな『大好き』で溢れていた。

ケーキの箱を大事に提げた新太の隣を歩きながら、彼の家へと向かう。

「そういえば、今日親父たち親戚の集まりに出かけててさ。夜まで誰もいないんだ」

「あ、そうなんだ」

ふいに新太から告げられた言葉に普通に頷きながらも、私の心臓の奥がトクリと小さく跳ねた。

(夜まで、ずっと二人きり……)

ほんの少しだけよぎる考えに一瞬ドキッとしたけれど、隣を歩く新太はいつも通り無邪気な顔で笑っている。

見慣れた新太の家に着き、「どうぞ」と招き入れてくれる彼に続いて家の中に入った。

カチャリ、と背後で玄関のドアが閉まる。

「お邪魔します」

靴を脱いで上がった家の中は静まり返っていて、本当に誰もいないんだなと実感して、また少しだけ胸がソワソワした。

「さっそくケーキ食べよっか! カフェオレなら作れるから、俺、淹れてくるね」

「うん、手伝う!」

楽しそうに笑ってキッチンへ向かう新太の背中を追いかける。

二人きりの、特別で穏やかな時間が始まろうとしていた。
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