君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
境界線の向こう側
「美味しいね」と笑い合いながら、二人で買ってきたケーキをつつく。
「俺、甘いのも結構いけるんだよな」
と、新太はチョコケーキを美味しそうに頬張っていた。
テレビの音と、私たちの他愛もない会話。
誰もいない家だということを忘れるくらい、いつも通りの楽しくて穏やかな時間だった。
でも、さっきから時々、新太の視線が少しだけ熱を帯びている気がして。
私はフォークを見つめたまま、上手く目を合わせられずにいた。
「ごちそうさま。……お皿、洗ってくるね」
空になったお皿を重ねて立ち上がろうとした私を、新太の大きな手がそっと引き留めた。
「……いいよ、あとで俺がやるから」
「でも……」
「今は、もう少し俺の傍にいて」
少しだけ低くなった新太の声に、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
腕を引かれるまま、私はソファーに座り直す。
ふと会話が途切れると、家の中の静寂が急に耳に届いた。
時計の秒針が動く音だけが、やけに響いている。
夜まで誰も帰ってこない、二人きりの空間。その事実が、波のように押し寄せてきて私を包み込んだ。
「……柚那」
名前を呼ばれて顔を上げると、新太の真っ直ぐな瞳が私を捉えていた。
無邪気な少年の顔ではなくて、少しだけ大人びた、熱を持った男の人の目。
「ん……っ」
引き寄せられ、そっと唇が重なる。
最初は確かめ合うような優しいキスだったのに、次第にその角度が変わり、熱を帯びていく。
新太の腕が私の背中を包み込み、逃げ場をなくすように強く抱き寄せられた。
唇を離した新太が、熱い吐息をこぼしながら私の耳元で呟く。
「……柚那……いい? 嫌じゃない……?」
そんなふうに、私の気持ちを確かめるように聞いてくれる新太が愛おしい。
初めてのことだから、不安や少しの怖さはもちろんある。
でも、それ以上に、大好きな新太とこのままひとつになりたいという気持ちが、胸の中で大きく膨らんでいた。
「……うん。……新太がいい」
私がそう伝えると、新太は少しだけ安堵したように目元を緩めて、もう一度深く、私にキスをした。
――ここから先の時間は、夢の中みたいに曖昧で、甘くて、熱かった。
生々しい現実は遠のき、ただ新太の体温と、優しい匂いだけが私を包み込んでいる。
何度も私の名前を呼んで、壊れ物に触れるように大切に抱きしめてくれる新太。
少しの痛みも、彼が落とす優しいキスと「大丈夫?」「痛くない?」と気遣う言葉が溶かしてくれた。
(本当に、この人の特別になれたんだ……)
新太の広い背中に腕を回し、私はきつく目を閉じる。
肌と肌が触れ合う温もりの中で、私は確かな『愛されている』という実感に満たされていた。
しばらくして、静寂が戻った部屋の中で、新太がそっと私を抱きしめ直した。
耳元で聞こえる彼の鼓動が、今は誰よりも近くに感じられる。
「……柚那、ずっと俺のそばにいて」
新太の腕の中で、私は何も言わずにただ静かに頷いた。
この穏やかで熱い時間が、いつまでも続けばいい。それ以外のことは、何も考えたくなかった。
「俺、甘いのも結構いけるんだよな」
と、新太はチョコケーキを美味しそうに頬張っていた。
テレビの音と、私たちの他愛もない会話。
誰もいない家だということを忘れるくらい、いつも通りの楽しくて穏やかな時間だった。
でも、さっきから時々、新太の視線が少しだけ熱を帯びている気がして。
私はフォークを見つめたまま、上手く目を合わせられずにいた。
「ごちそうさま。……お皿、洗ってくるね」
空になったお皿を重ねて立ち上がろうとした私を、新太の大きな手がそっと引き留めた。
「……いいよ、あとで俺がやるから」
「でも……」
「今は、もう少し俺の傍にいて」
少しだけ低くなった新太の声に、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
腕を引かれるまま、私はソファーに座り直す。
ふと会話が途切れると、家の中の静寂が急に耳に届いた。
時計の秒針が動く音だけが、やけに響いている。
夜まで誰も帰ってこない、二人きりの空間。その事実が、波のように押し寄せてきて私を包み込んだ。
「……柚那」
名前を呼ばれて顔を上げると、新太の真っ直ぐな瞳が私を捉えていた。
無邪気な少年の顔ではなくて、少しだけ大人びた、熱を持った男の人の目。
「ん……っ」
引き寄せられ、そっと唇が重なる。
最初は確かめ合うような優しいキスだったのに、次第にその角度が変わり、熱を帯びていく。
新太の腕が私の背中を包み込み、逃げ場をなくすように強く抱き寄せられた。
唇を離した新太が、熱い吐息をこぼしながら私の耳元で呟く。
「……柚那……いい? 嫌じゃない……?」
そんなふうに、私の気持ちを確かめるように聞いてくれる新太が愛おしい。
初めてのことだから、不安や少しの怖さはもちろんある。
でも、それ以上に、大好きな新太とこのままひとつになりたいという気持ちが、胸の中で大きく膨らんでいた。
「……うん。……新太がいい」
私がそう伝えると、新太は少しだけ安堵したように目元を緩めて、もう一度深く、私にキスをした。
――ここから先の時間は、夢の中みたいに曖昧で、甘くて、熱かった。
生々しい現実は遠のき、ただ新太の体温と、優しい匂いだけが私を包み込んでいる。
何度も私の名前を呼んで、壊れ物に触れるように大切に抱きしめてくれる新太。
少しの痛みも、彼が落とす優しいキスと「大丈夫?」「痛くない?」と気遣う言葉が溶かしてくれた。
(本当に、この人の特別になれたんだ……)
新太の広い背中に腕を回し、私はきつく目を閉じる。
肌と肌が触れ合う温もりの中で、私は確かな『愛されている』という実感に満たされていた。
しばらくして、静寂が戻った部屋の中で、新太がそっと私を抱きしめ直した。
耳元で聞こえる彼の鼓動が、今は誰よりも近くに感じられる。
「……柚那、ずっと俺のそばにいて」
新太の腕の中で、私は何も言わずにただ静かに頷いた。
この穏やかで熱い時間が、いつまでも続けばいい。それ以外のことは、何も考えたくなかった。