君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

「大好き」のその先

ホテルの裏へと続くビーチで、新太と待ち合わせる。

あたりはすっかり真っ暗で、月の明かりに照らされた波打ち際が、きらきらと細かく光ってとても綺麗だった。

ふと上を見上げると、夜空いっぱいに満天の星空が広がっていて、思わず息を呑んで見とれてしまうほど美しい。
砂浜に打ち寄せる静かな波の音だけが、心地よく耳に響いている。

その星空にすっかり心を奪われていると、すぐ後ろから愛おしい声が届いた。

「星、すごいきれいだな」

振り返ると、そこには月明かりに照らされた新太が立っていた。
夜の闇の中でも、彼が私を見つめる優しい瞳がはっきりとわかる。

「うん。キャンプの時の星空もきれいだったけど、沖縄の星空は比べものにならないくらい星が多くて、本当にすごいきれい……」

私が感動を口にすると、新太は少しだけ目を細めて、愛おしそうに微笑んだ。

「今回の修学旅行、ゆっくり話す時間なんて無いと思ってたから、こうやって会えてよかった。……あと、柚那に渡したいものがあってさ」

新太はそう言って、ポケットから小さな包みを取り出して私に手渡した。

「これ。お店で見たときに、いいなと思ったから」

新太が少し照れくさそうに渡してくれたのは、沖縄のホタルガラスで作られた、深くて美しい青色のブレスレットだった。
ガラスの中に、まるで小さな宇宙や夜の海を閉じ込めたような、吸い込まれそうな青色。

よく見ると、新太の手首にも同じペアのものが巻かれている。

「ありがとう……! すごくかわいいし、とってもきれい!」

思いがけないプレゼントに胸がいっぱいになりながら、私はバッグから先ほど買った小さな袋を取り出した。

「実はね、わたしも新太に渡すものがあって……」

私も、光を当てると沖縄の海のように輝く波のデザインのネックレスを新太に手渡した。
まさかお互いに、相手を想って同じようにお土産を選んでいたなんて。

「まじで? ありがとな」

新太は嬉しそうに目元を緩めると、その場ですぐにネックレスを首につけてくれた。
私も、もらったばかりのブレスレットをそっと手首につける。

お揃いのアクセサリーが、月明かりの下で嬉しそうにきらめいた。

離れていても、お互いを想っていた時間がこうして形になったことが何よりも嬉しかった。

それから、少しの間だけ無言の時間が流れた。

寄せては返す波の音だけが、二人の間に静かに響くなかで、新太は何かをじっくりと考えているようだった。
波打ち際を見つめる彼の横顔を、私もそっと見つめる。

沈黙を破り、先に話し始めたのは新太だった。

「柚那はさ……まだいろいろ、不安なんだよな? 見てればわかるよ。……不安にさせて、ごめんな」

その言葉が、私の胸の奥にずっと閉じ込めていた弱さに、真っ直ぐに触れた。

強がって隠していたつもりだったのに、彼にはちゃんと伝わっていたんだ。
ずっと張り詰めていた心の糸が、新太の優しい声の温度でゆっくりとほどけていく。

話を聞いている最中、私は堪えきれなくなって、ポロポロと涙をこぼしてしまった。

泣くつもりなんて、本当に全くなかった。
せっかくの綺麗な星空の下で、ずっと笑っていたかったのに。

それでも、新太の底抜けに優しい眼差しと、不器用なほど真っ直ぐな言葉が、私の心の堤防を簡単に決壊させてしまう。

「柚那、だいすきだよ」

新太は切なそうな、だけどこの上なく愛おしそうな表情を浮かべ、私の頬を伝う涙を、大きくて温かい手で優しく拭ってくれた。
彼の手のひらの熱が、冷えていた私の心をじんわりと溶かしていく。

波の音が二人の呼吸を隠すように響く中、新太の顔がゆっくりと近づいてくる。

星明かりに照らされた彼の長いまつ毛や、少し切なげに伏せられた視線までが見えて、私はそっと目を閉じた。

重なった唇は驚くほど柔らかくて、温かかった。
私たちはそのまま静かに、甘くて優しい口づけを交わした。

満天の星空の下、波の音と新太の温もりだけが、今の私にとって世界でただ一つの確かなものに思えた。

(ああ、私はこの人のことを、きっと忘れない)

新太に抱きしめられながら、胸の奥がじんわりと熱くなる。

「大好き」っていう言葉じゃ、もう全然足りない。
これがきっと、誰かを「愛する」ってことなんだ。

新太のことを、人生で一番……。
そう呼んでもいいくらい、私はこの人を想っている。
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