君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

午前三時の暗闇

私たちのダンスチームの打ち上げは、後日行われ、特に大きな問題もなく楽しく終わった。
みんなで食事をして、優勝できなかった悔しさも笑い飛ばして、純粋に達成感を分かち合うことができた。

けれど、私にとっての本当の“問題”は、新太たちのチームの打ち上げの日だった。
新太は出発前、私を安心させるようにこう言ってくれていた。

『打ち上げ中も、時間を見つけて連絡入れるよ』

その言葉をお守りのように胸に抱いて、私は彼の打ち上げの日を迎えた。

『今から行ってくる!』

そう連絡がきたのは夕方のこと。新太たちのチームは、どうやら駅前の焼肉屋で打ち上げをするようだった。
『楽しんできてね』と返信を送り、私はスマホを机に置いた。
「連絡を入れる」と言ってくれた新太の言葉を信じて、私はなるべく平静を装って夜の時間を過ごそうとした。

それから数時間が経ち、次にスマホが震えたのは21時近くのことだった。

『2次会でカラオケに行くことになった!』

画面に表示された文字を見て、心臓がどくりと嫌な音を立てた。
カラオケ。薄暗くて、距離が近くて、密室の空間。
嫌な想像ばかりが膨らんで、私は不安に駆られるまま、意を決して誰がいるのかを聞いてみた。

数分後、返ってきたLINEには、一番見たくない名前が並んでいた。

『数人の先輩たちと、同級生は梨花や茉莉たち女子4人。あとは同じクラスの男子が2人程度だよ』

……聞くんじゃなかった。

画面を見つめたまま、私は唇を強く噛み締めた。
いっそ知らないままの方が、どれほどよかっただろう。
あの中には、梨花がいる。あの言葉の向かう先が新太なんじゃないかと、私をずっと不安にさせている彼女が、深夜のカラオケという空間で今、新太のそばにいるのだ。

その日のそのやり取りを最後に、新太からの連絡はぱったりと途絶えた。

時計の針が0時を回り、1時になり、2時を過ぎる。

​静まり返った部屋の中で、私はベッドの上に体育座りになり、握りしめたスマホの画面を何度も何度も確認した。
時間が過ぎるごとに、不安は形を変えて恐怖へと変わっていく。
通知音の鳴らない真っ暗な画面が、私という存在を拒絶しているように見えた。

待てど暮らせど、画面に通知が届くことはなかった。
結局、一睡もできないまま、窓の外が白み始めていった。

ーーーーーーーーーー

翌日。
新太から連絡があったのは、太陽もすっかり高くなったお昼も近くなってからだった。

『連絡ごめん。今起きた!』

何事もなかったかのような、あっけらかんとした短い文面。
私は震える指で、ずっと聞きたかった、でも聞きたくなかった問いを打ち込んだ。

『……結局、何時まで2次会だったの?』

しばらくして、返信が届く。

『多分3時くらいかな? あんまり覚えてないけど』

……3時。
あんまり、覚えてない?

新太のその返信で、私が納得なんてできるはずもなかった。
どうして記憶が曖昧になるの?
その時間まで、梨花たちと一緒に、何をして、何を話していたの?
夜中、私がどれだけスマホを握りしめて、泣きそうになりながら待っていたか、想像もしなかったの?

問い詰めたい言葉は、喉の奥まで溢れかえっていた。
けれど、同時に私は、「これ以上なにも聞かない方がいい」と直感した。

これ以上深追いして、もし最悪の真実を知ってしまったら。
新太から、決定的な言葉を聞かされてしまったら。

自分の中で必死に押し殺してきた不安が、今の何倍にも膨れ上がって私を壊してしまうのが怖くて。
私は画面を見つめたまま、それ以上、言葉を返すことができなかった。
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