君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
崩壊
消えた二人と、残酷な噂
打ち上げの日から数日が経ったある日のこと。
学校で、明里が周囲を気にしながら、
切羽詰まった顔で私の腕を強く掴んだ。
「柚那……! 今日、部活が終わったあと、絶対に時間作って」
「わっ……わかったよ! どうしたの!? なにかあった?」
「ここでは話せないの……。とりあえず、部活のあといつものファミレス集合ね。……ごめん、柚那」
明里は辛そうに顔を歪めると、逃げるように教室へと戻っていった。
なんだろう?
あんな明里の顔、見たことがない。
胸騒ぎを覚えながら授業と部活を終え、私は急いでファミレスへ向かい、明里と合流した。
「おつかれ。……どうしたの? 勇斗となにかあった?」
席に着くなりそう尋ねたけれど、明里はなかなか口を開こうとしない。
その重苦しい空気に、私の心臓の鼓動も少しずつ早まっていた。
「私のことじゃなくて!……柚那のこと……今日、2組の子から聞いた話なんだけどね……」
重い口を開いた明里が教えてくれた話は、私の想像をはるかに絶するものだった。
明里の口から語られたのは、あの新太たちの打ち上げの日のこと。
1次会は駅前の焼肉屋で、ダンスチーム全員で行われたらしい。
そこまでは問題なかった。
問題はそのあと。
2次会へのメンバーを募った際、先輩数人と、新太、梨花、茉莉、
そして2組の生徒数名がカラオケに参加することになったという。
深夜のカラオケ。
みんなで盛り上がっている最中、新太が「トイレに行く」と言って部屋を出たきり、なかなか戻ってこなかった。
それを心配して……あるいは、最初から狙っていたのか。
「様子を見てくる」と言って、梨花が後を追うように部屋を出たらしい。
けれど、その後、その二人は――いっこうに部屋に戻ってこなかったのだ。
「……柚那、信じられないかもしれないけど、聞いて。
そのあと二人がどこに行ったのか、今、ブロックの中で噂になってるの」
明里は辛そうに私から目を逸らし、震える声で言葉を絞り出した。
「二人で……近くのラブホテルに行ったんじゃないかって……」
ドクン、と。
心臓が大きく跳ね上がり、全身の血の気が一気に引いていくのがわかった。
頭の中が真っ白になる。
周りの客の笑い声も、店内に流れるBGMも、
突然遠くの世界の音のように聞こえなくなった。
息の仕方を忘れたように、呼吸が浅くなる。
もちろん、それが真実かどうかなんてわからない。明里が聞いたのも、あくまで「噂」だ。
もしかしたら、茉莉には何か事情の連絡が入っていたのかもしれないし、
ただ外の風に当たっていただけかもしれない。
でも、他の参加メンバーは、二人の行方を誰も、まったく知らなかったというのだ。
それが、明里が聞いた話の全貌だった。
(あの夜……連絡が途絶えた、あの時間……)
『多分3時くらいかな? あんまり覚えてないけど』
翌日届いた新太のあっけらかんとしたLINEが、頭の中で何度も何度も繰り返される。
カラオケを抜け出して、二人きりで。
あの暗号の通り、梨花が新太のことを好きだったとしたら?
そして、新太もそれに流されていたとしたら……?
点と点が、最悪な形で線に繋がっていく。
噂が事実かどうか。そんなことはもう、どうでもよかった。
「新太と梨花が消えた」
「ホテルに行ったという噂が立っている」
――その事実だけで、私という存在を粉々に打ち砕くには十分だった。
私は、目の前のグラスを見つめたまま、ただ小さく震えることしかできなかった。
冷たい水滴がグラスを伝い落ちるのと同じように。
私の中で何かが、音を立てて完全に崩れ落ちていった。
学校で、明里が周囲を気にしながら、
切羽詰まった顔で私の腕を強く掴んだ。
「柚那……! 今日、部活が終わったあと、絶対に時間作って」
「わっ……わかったよ! どうしたの!? なにかあった?」
「ここでは話せないの……。とりあえず、部活のあといつものファミレス集合ね。……ごめん、柚那」
明里は辛そうに顔を歪めると、逃げるように教室へと戻っていった。
なんだろう?
あんな明里の顔、見たことがない。
胸騒ぎを覚えながら授業と部活を終え、私は急いでファミレスへ向かい、明里と合流した。
「おつかれ。……どうしたの? 勇斗となにかあった?」
席に着くなりそう尋ねたけれど、明里はなかなか口を開こうとしない。
その重苦しい空気に、私の心臓の鼓動も少しずつ早まっていた。
「私のことじゃなくて!……柚那のこと……今日、2組の子から聞いた話なんだけどね……」
重い口を開いた明里が教えてくれた話は、私の想像をはるかに絶するものだった。
明里の口から語られたのは、あの新太たちの打ち上げの日のこと。
1次会は駅前の焼肉屋で、ダンスチーム全員で行われたらしい。
そこまでは問題なかった。
問題はそのあと。
2次会へのメンバーを募った際、先輩数人と、新太、梨花、茉莉、
そして2組の生徒数名がカラオケに参加することになったという。
深夜のカラオケ。
みんなで盛り上がっている最中、新太が「トイレに行く」と言って部屋を出たきり、なかなか戻ってこなかった。
それを心配して……あるいは、最初から狙っていたのか。
「様子を見てくる」と言って、梨花が後を追うように部屋を出たらしい。
けれど、その後、その二人は――いっこうに部屋に戻ってこなかったのだ。
「……柚那、信じられないかもしれないけど、聞いて。
そのあと二人がどこに行ったのか、今、ブロックの中で噂になってるの」
明里は辛そうに私から目を逸らし、震える声で言葉を絞り出した。
「二人で……近くのラブホテルに行ったんじゃないかって……」
ドクン、と。
心臓が大きく跳ね上がり、全身の血の気が一気に引いていくのがわかった。
頭の中が真っ白になる。
周りの客の笑い声も、店内に流れるBGMも、
突然遠くの世界の音のように聞こえなくなった。
息の仕方を忘れたように、呼吸が浅くなる。
もちろん、それが真実かどうかなんてわからない。明里が聞いたのも、あくまで「噂」だ。
もしかしたら、茉莉には何か事情の連絡が入っていたのかもしれないし、
ただ外の風に当たっていただけかもしれない。
でも、他の参加メンバーは、二人の行方を誰も、まったく知らなかったというのだ。
それが、明里が聞いた話の全貌だった。
(あの夜……連絡が途絶えた、あの時間……)
『多分3時くらいかな? あんまり覚えてないけど』
翌日届いた新太のあっけらかんとしたLINEが、頭の中で何度も何度も繰り返される。
カラオケを抜け出して、二人きりで。
あの暗号の通り、梨花が新太のことを好きだったとしたら?
そして、新太もそれに流されていたとしたら……?
点と点が、最悪な形で線に繋がっていく。
噂が事実かどうか。そんなことはもう、どうでもよかった。
「新太と梨花が消えた」
「ホテルに行ったという噂が立っている」
――その事実だけで、私という存在を粉々に打ち砕くには十分だった。
私は、目の前のグラスを見つめたまま、ただ小さく震えることしかできなかった。
冷たい水滴がグラスを伝い落ちるのと同じように。
私の中で何かが、音を立てて完全に崩れ落ちていった。