君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
信じられない。
「『千春だよ』って」
「――――え」
一瞬、世界から全ての音が消えた。
カチ、カチ、と教室の時計の音だけが、やけに大きく鼓膜を叩く。
目の前がぐらりと揺れて、自分がどんな顔をしているのかさえ分からなくなるような感覚に襲われた。
「千春が全部教えてくれたんだって。柚那たちの状況も、新太くんの好みも。……私、柚那と千春がマネージャー同士で仲が良いの知ってたから、どうしても許せなくて。柚那に言わなきゃって、ずっと思ってたの」
遥の声が、遠く遠くで響いている。
頭の中が真っ白になり、指先が凍りついたように冷たくなっていく。
千春。
いつも一緒に笑い合って、同じマネージャー同士として励まし合ってきた千春。
言われてみれば、思い当たる節があった。
ほんの数日前のこと。私、真美、明里、千春の四人で、部活後にいつものように集まって話していた時のことだ。
『そういえばさ、柚那。最近、新太とはどうなの?』
たわいもない雑談の途中で、千春が不意に私に話を振ってきた。
私が少し前に思い切って新太へLINEを送ったことを打ち明けると、千春は少し驚いたように相槌を打つ。
『え、LINE送ったんだ。何て送ったの?』
私がそれに答えると、千春はうんうんと頷きながら、さらに言葉を続けた。
『そっか……。新太からはなんて返ってきた?』
女子同士の他愛のない、ごく自然な恋愛話。
あの時は、ただ親身になって私の話を聞いてくれているんだとしか思っていなかった。
けれど、あれは私を心配していたわけでも、純粋な興味でもなかったのだ。
私に少しも怪しまれないほど自然に、彼女は着実に情報を集めていたのだ。
(全部、梨花に報告するためだったんだ……)
すべての辻褄が合った瞬間、背筋にぞっとするような悪寒が走った。
信じられない。
私が新太と付き合っていた頃から、明里や真美と一緒に、千春にもたくさんのことを話してきた。
新太と二人で行ったキャンプのこと、修学旅行の思い出、打ち上げ後の新太の態度に苦しんでいた夜のこと。
そして別れた今も、まだ彼を諦めきれずに苦しんでいること……そのすべてを、彼女に打ち明けていた。
私たちが別れたあと、私が「まだ新太のことが好き」だと打ち明けたとき、千春は「また自分を磨いて、振り向かせればいいんだよ」と、まっすぐな瞳で前を向くように励ましてくれた。
……あのとき、彼女はどんな気持ちで私にその言葉をかけていたんだろう。
私の悩む姿を、すれ違ってボロボロになっていく私と新太を、どんな目で見ていたんだろう。
もう、誰を信じていいのかわからない。
遥には「教えてくれてありがとう」と震える声で精一杯の礼を伝え、彼女を教室へ戻した。
やはり、私と付き合っている間に、新太は梨花と関係を持っていたんだ。
新太、梨花、そして千春。
この三人で、私のことを裏で笑っていたのかな。
何も知らずに必死に悩んで、傷ついている私を見て、心の中で嘲笑っていたのだろうか。
どうして、こんなにも私を傷つけるの? 何がそんなに面白かったの?
この事実を、明里に話したい。
でも、話していいんだろうか。千春とも仲が良かった明里のことだ、もしかしたら……なんて、恐ろしい考えが頭をよぎる。
ずっと私を支えてくれた明里。
明里のことは、信じてもいいよね?
もし、明里まで私の敵だったら、私は本当に……。
どくどくと嫌な音を立てる心臓。疑心暗鬼が止まらない。
今の私は、誰のことも信じられない。
誰も、何も、信じたくない。
私は、完全に人間不信になっていた。
「――――え」
一瞬、世界から全ての音が消えた。
カチ、カチ、と教室の時計の音だけが、やけに大きく鼓膜を叩く。
目の前がぐらりと揺れて、自分がどんな顔をしているのかさえ分からなくなるような感覚に襲われた。
「千春が全部教えてくれたんだって。柚那たちの状況も、新太くんの好みも。……私、柚那と千春がマネージャー同士で仲が良いの知ってたから、どうしても許せなくて。柚那に言わなきゃって、ずっと思ってたの」
遥の声が、遠く遠くで響いている。
頭の中が真っ白になり、指先が凍りついたように冷たくなっていく。
千春。
いつも一緒に笑い合って、同じマネージャー同士として励まし合ってきた千春。
言われてみれば、思い当たる節があった。
ほんの数日前のこと。私、真美、明里、千春の四人で、部活後にいつものように集まって話していた時のことだ。
『そういえばさ、柚那。最近、新太とはどうなの?』
たわいもない雑談の途中で、千春が不意に私に話を振ってきた。
私が少し前に思い切って新太へLINEを送ったことを打ち明けると、千春は少し驚いたように相槌を打つ。
『え、LINE送ったんだ。何て送ったの?』
私がそれに答えると、千春はうんうんと頷きながら、さらに言葉を続けた。
『そっか……。新太からはなんて返ってきた?』
女子同士の他愛のない、ごく自然な恋愛話。
あの時は、ただ親身になって私の話を聞いてくれているんだとしか思っていなかった。
けれど、あれは私を心配していたわけでも、純粋な興味でもなかったのだ。
私に少しも怪しまれないほど自然に、彼女は着実に情報を集めていたのだ。
(全部、梨花に報告するためだったんだ……)
すべての辻褄が合った瞬間、背筋にぞっとするような悪寒が走った。
信じられない。
私が新太と付き合っていた頃から、明里や真美と一緒に、千春にもたくさんのことを話してきた。
新太と二人で行ったキャンプのこと、修学旅行の思い出、打ち上げ後の新太の態度に苦しんでいた夜のこと。
そして別れた今も、まだ彼を諦めきれずに苦しんでいること……そのすべてを、彼女に打ち明けていた。
私たちが別れたあと、私が「まだ新太のことが好き」だと打ち明けたとき、千春は「また自分を磨いて、振り向かせればいいんだよ」と、まっすぐな瞳で前を向くように励ましてくれた。
……あのとき、彼女はどんな気持ちで私にその言葉をかけていたんだろう。
私の悩む姿を、すれ違ってボロボロになっていく私と新太を、どんな目で見ていたんだろう。
もう、誰を信じていいのかわからない。
遥には「教えてくれてありがとう」と震える声で精一杯の礼を伝え、彼女を教室へ戻した。
やはり、私と付き合っている間に、新太は梨花と関係を持っていたんだ。
新太、梨花、そして千春。
この三人で、私のことを裏で笑っていたのかな。
何も知らずに必死に悩んで、傷ついている私を見て、心の中で嘲笑っていたのだろうか。
どうして、こんなにも私を傷つけるの? 何がそんなに面白かったの?
この事実を、明里に話したい。
でも、話していいんだろうか。千春とも仲が良かった明里のことだ、もしかしたら……なんて、恐ろしい考えが頭をよぎる。
ずっと私を支えてくれた明里。
明里のことは、信じてもいいよね?
もし、明里まで私の敵だったら、私は本当に……。
どくどくと嫌な音を立てる心臓。疑心暗鬼が止まらない。
今の私は、誰のことも信じられない。
誰も、何も、信じたくない。
私は、完全に人間不信になっていた。