君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
怒りの代弁
翌日。
重い足取りで学校へ行っても、私の心は分厚く冷たい霧に包まれたままだった。
自分の教室の席に座り、ぼんやりと窓の外を眺める。
違うクラスにいる明里や真美は、今頃いつも通りに友達と笑い合っているのだろうか。
彼女たちの無邪気な笑顔を想像するだけで、今の私にはどこか遠く、まるで自分だけが違う世界に隔離されてしまったように感じた。
(明里に、話すべきなのかな……)
千春が梨花の内通者だったという衝撃が、私の心をがんじがらめに縛り付けていた。
いつも一緒に笑い合って、悩みを打ち明けてきた千春に裏切られていたのなら。
もしかして、明里だって最初から全部知っていて、私のことを笑っていたんじゃないか……。
そんな最悪な疑心暗鬼が頭をぐるぐると回り、授業中も先生の声は右から左へと抜けていく。ノートを取る手も止まり、ただ時間だけが過ぎていった。
もし明里に話して、彼女もすべてを知っていたら。
その事実を突きつけられたら、私は今度こそ完全に壊れてしまう。
でも、一人で抱え続けるには、この事実はあまりにも重すぎて呼吸が苦しかった。
悩んで、迷って、苦しんで。
けれど、新太と別れてボロボロで泣いていた私を、自分のことのように心配して背中をさすってくれた明里の温かい手が、最後に頭に浮かんだ。
明里だけは、信じたい。
明里まで疑ってしまったら、私は本当に、この世界で一人ぼっちになってしまう。
放課後。
私は意を決して明里と二人きりになり、遥から聞いたすべての事実を震える声で打ち明けた。
明里は私の話を黙って聞き終えると、信じられないものを見るように目を大きく見開いた。
そして次の瞬間、私以上に激しく、真っ赤になって怒ってくれたのだ。
「千春……!? 千春って、私と同じマネージャーの千春だよね? なんでそんなこと……ちょっと酷すぎない!?」
明里の声が、怒りで震えていた。
「柚那の気持ちを知ってて、それを全部梨花に流してたってことだよね? ありえない。本当にありえないんだけど!」
その反応を見て、私は体の奥からすっと毒が抜けていくような気がした。
よかった。明里は、明里だけは、私の味方だ。
張り詰めていた糸がふっと緩み、泣きそうになるのを必死に堪えた。
私は明里に、一つだけお願いをした。
「話しておきながら申し訳ないんだけど……明里は千春と同じクラスだし、同じマネージャーでもあるから。あくまで私と千春との間の問題だし、千春にはいつも通りに接してほしいの」
私のせいで明里の部活やクラスの空気を壊したくなかった。
私自身は千春と違う部活だけれど、マネージャー同士、どうしても顔を合わせる機会はある。けれど、これからは必要最低限の挨拶だけをして、自分からは一切関わらずに距離を置こうと心に決めていた。
「……複雑ではあるけど……わかった」
明里は悔しそうに唇を噛みながらも、私の気持ちを汲んで一応納得してくれた。けれど、その怒りの炎はまったく収まっていなかった。
「それはそうとして! 柚那と新太が別れる前に梨花と付き合い始めたの!? なにそれ、ただの浮気じゃん! 新太、嘘ついてるし最低!
それにさ、梨花の『話そうとは思ってるんだけど……』って何なの!? 自分が柚那から略奪したくせに悲劇のヒロインぶって、本当に気に入らない!!」
私の心の奥底に沈んでいた黒い感情。
本当は叫びたかったこと、言いたかったこと。
それをすべて、明里が大きな声で代弁してくれた。
おかげで、窒息しそうに張り詰めていた気持ちが、少しだけ軽くなった気がした。
明里と話し合った結果、今はむやみに動かず、梨花から直接私に何か連絡がくるまで、じっと待つことにした。
『言わなきゃなとは思ってるんだけどね』
梨花がそう言っていたのなら、彼女からけじめをつけるための連絡が来るかもしれない。
嵐の前の静けさのような、気味の悪い平穏。
それでも、一人じゃないと思えるだけで、私はなんとか立っていることができた。
重い足取りで学校へ行っても、私の心は分厚く冷たい霧に包まれたままだった。
自分の教室の席に座り、ぼんやりと窓の外を眺める。
違うクラスにいる明里や真美は、今頃いつも通りに友達と笑い合っているのだろうか。
彼女たちの無邪気な笑顔を想像するだけで、今の私にはどこか遠く、まるで自分だけが違う世界に隔離されてしまったように感じた。
(明里に、話すべきなのかな……)
千春が梨花の内通者だったという衝撃が、私の心をがんじがらめに縛り付けていた。
いつも一緒に笑い合って、悩みを打ち明けてきた千春に裏切られていたのなら。
もしかして、明里だって最初から全部知っていて、私のことを笑っていたんじゃないか……。
そんな最悪な疑心暗鬼が頭をぐるぐると回り、授業中も先生の声は右から左へと抜けていく。ノートを取る手も止まり、ただ時間だけが過ぎていった。
もし明里に話して、彼女もすべてを知っていたら。
その事実を突きつけられたら、私は今度こそ完全に壊れてしまう。
でも、一人で抱え続けるには、この事実はあまりにも重すぎて呼吸が苦しかった。
悩んで、迷って、苦しんで。
けれど、新太と別れてボロボロで泣いていた私を、自分のことのように心配して背中をさすってくれた明里の温かい手が、最後に頭に浮かんだ。
明里だけは、信じたい。
明里まで疑ってしまったら、私は本当に、この世界で一人ぼっちになってしまう。
放課後。
私は意を決して明里と二人きりになり、遥から聞いたすべての事実を震える声で打ち明けた。
明里は私の話を黙って聞き終えると、信じられないものを見るように目を大きく見開いた。
そして次の瞬間、私以上に激しく、真っ赤になって怒ってくれたのだ。
「千春……!? 千春って、私と同じマネージャーの千春だよね? なんでそんなこと……ちょっと酷すぎない!?」
明里の声が、怒りで震えていた。
「柚那の気持ちを知ってて、それを全部梨花に流してたってことだよね? ありえない。本当にありえないんだけど!」
その反応を見て、私は体の奥からすっと毒が抜けていくような気がした。
よかった。明里は、明里だけは、私の味方だ。
張り詰めていた糸がふっと緩み、泣きそうになるのを必死に堪えた。
私は明里に、一つだけお願いをした。
「話しておきながら申し訳ないんだけど……明里は千春と同じクラスだし、同じマネージャーでもあるから。あくまで私と千春との間の問題だし、千春にはいつも通りに接してほしいの」
私のせいで明里の部活やクラスの空気を壊したくなかった。
私自身は千春と違う部活だけれど、マネージャー同士、どうしても顔を合わせる機会はある。けれど、これからは必要最低限の挨拶だけをして、自分からは一切関わらずに距離を置こうと心に決めていた。
「……複雑ではあるけど……わかった」
明里は悔しそうに唇を噛みながらも、私の気持ちを汲んで一応納得してくれた。けれど、その怒りの炎はまったく収まっていなかった。
「それはそうとして! 柚那と新太が別れる前に梨花と付き合い始めたの!? なにそれ、ただの浮気じゃん! 新太、嘘ついてるし最低!
それにさ、梨花の『話そうとは思ってるんだけど……』って何なの!? 自分が柚那から略奪したくせに悲劇のヒロインぶって、本当に気に入らない!!」
私の心の奥底に沈んでいた黒い感情。
本当は叫びたかったこと、言いたかったこと。
それをすべて、明里が大きな声で代弁してくれた。
おかげで、窒息しそうに張り詰めていた気持ちが、少しだけ軽くなった気がした。
明里と話し合った結果、今はむやみに動かず、梨花から直接私に何か連絡がくるまで、じっと待つことにした。
『言わなきゃなとは思ってるんだけどね』
梨花がそう言っていたのなら、彼女からけじめをつけるための連絡が来るかもしれない。
嵐の前の静けさのような、気味の悪い平穏。
それでも、一人じゃないと思えるだけで、私はなんとか立っていることができた。