君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

近づく距離


あんなに寂しがっていたのが嘘みたいに、新太と勇斗の恋はどちらも長くは続かなかった。

新太は付き合ってみたものの、すぐに彼女から別れを告げられて振られてしまったし、勇斗のほうは、女の子から告白されて付き合ったはずなのに、なぜかすぐに別れることになったらしい。

実は、勇斗の彼女と新太の彼女は元々同じ仲良しグループで。新太の彼女にけしかけられて、勇斗の彼女が告白したというのが真相だったみたい。
結局、勇斗は彼女の気持ちに応えられなくて自分から振った形になったし、新太は彼女に一方的にフラれたらしい。

彼女たちには悪いけれど、2人がフリーに戻ったことで、少なくなっていた4人の時間はすぐに元通りになった。廊下で集まって話す機会がまた増えて、私は密かにホッとしていた。

ーーーーーーーーーー

それから季節は進み、汗ばむような日が増えてきた初夏のある日のこと。
部活が休みの休日に、4人で水族館へ遊びに行くことになった。

学校では毎日のように冗談を言い合っているメンバーだけど、制服じゃない姿で、しかも学校の外で会うのはこれが初めてだ。

待ち合わせの当日は、朝からずっと胸がざわついている。鏡の前で何度も服装を確認し、いつもの学校とは違う自分を確かめてから家を出た。

最寄り駅の改札前に着くと、そこにはもう私服姿の3人が待っていた。

美波の私服は見慣れているけれど、新太と勇斗の私服姿はなんだか少し新鮮だ。いつもは見慣れた制服姿しか見ていないから、Tシャツにデニムといったラフな格好の2人が、なんだか別の世界の人みたいに見える。

「お待たせ!」

挨拶を交わして、私たちは水族館の最寄り駅へ向かう電車に乗り込んだ。

休日ということもあって、車内は少し混み合っている。吊り革に掴まりながら他愛もない話をしていると、途中の駅から一気に人が乗ってきて、車内がぐっと狭くなった。

人の波に押されそうになり、私が思わず足元をよろめかせた、その時だった。

「……っと、大丈夫か?」

低めの声と一緒に、勇斗が私のすぐ目の前に一歩、踏み込んできた。

勇斗は私に背を向けるようにして立ち、周囲の人波から庇うように、さりげなく自分の体で小さなスペースを作ってくれる。

(わ……なんだか緊張する……)

やっぱり学校の外で会うのは少し照れくさい。
私服の勇斗はいつも以上に背が高く見えて、すぐ目の前にある広い背中に、ドキッとした。

ふわりと漂ってくる爽やかな柔軟剤の香りと、すぐ近くにある背中の温もり。ドクン、と私の心臓の音はいつもより少しだけ速くなる。

人混みに流されて離れてしまわないように、私はそっと、勇斗のシャツの裾を指先で小さく掴んだ。

勇斗は少しだけ後ろを振り返り、優しく微笑む。

「もうすぐ着くからな」

「うん、ありがとう……」

水族館に着いてからは、電車での緊張もどこかへ吹き飛んで、思いきり楽しんだ。

色鮮やかな熱帯魚に目を輝かせたり、巨大な水槽の前で立ち止まって海の中の静けさに浸ったり。大迫力のイルカショーでは、前列に座ったせいで一緒に水を被りそうになり、4人で顔を見合わせて大笑いした。

水族館を出たものの、まだまだ帰るには早い時間だ。この後どうしようかと、私たちは水族館の出口付近で立ち止まって悩んでしまった。

「俺ん家、狭いけどさ。外はめちゃくちゃ暑いし、俺の部屋でゲームとかやって過ごさない?」

新太が頭をかきながら、そんな提案をしてくれた。

確かに、日差しも強くなってきていて、これ以上外を歩き回るのは少しきつい。これと言って他に名案も思いつかないし。

「賛成!」「涼しいところに行きたい!」と、私たちはみんな新太の提案に迷わず飛びついた。

(男の子の部屋に行くのなんて、初めてかも……)

ほんの少しの緊張とワクワクを胸に抱えながら、私たちは新太の家へと歩き出した。
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