君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
再び

一番に伝えたかったこと

梨花がバイト先に来たあの日の波乱以降、私の日常は少しずつ落ち着きを取り戻し、いつもの穏やかな生活が戻ってきていた。

学園祭や体育祭……。
高校生活最後を彩る大きな行事も、あっという間に過去のものになっていく。

祭りの後のような少しの寂しさを抱えながら、私たちはついに「受験」という本格的な戦いへと足を踏み入れようとしていた。

私の進路は、すでに決めていた。

「手に職をつけたい」

その願いから、私はある専門分野に特化した医療系の専門学校を選択した。
人を支え、痛みに寄り添う仕事。決して簡単な道ではないけれど、覚悟はできている。

明里は、彼女の華やかな雰囲気にぴったりのブライダル関係の学校へ。

そして、勇斗は――。

リハビリテーションに関わる医療系の専門学校へと進む。
それは2年生に進級する時、彼が直接私に話してくれた、昔からの夢だった。

私が目指す場所と、勇斗が進む場所。
同じ医療という大きな枠組みの中にいても、歩む専門性は全く違う。

それでも、二人で「人の命や健康に寄り添う道」を選んだことは、なんだか不思議な縁だと感じていた。
彼と同じ方向を向いて未来に進めているような気がして、胸の奥がほんの少しだけ温かくなる。

私と明里は、お互いの希望する専門学校の体験入学へ一緒に足を運び、不安な背中を押し合った。

そして、季節が少しずつ色を変えていく頃。
私と明里は、一足先にそれぞれの第一志望の学校に無事合格することができた。

それからさらに時間が過ぎ、冬の足音が近づいてきた、ある日の夕方。
今日は――勇斗が受験した専門学校の合格発表日だった。

自室の机に向かいながらも、私は時折スマホの画面に目をやっていた。

(もう、結果見たのかな……)

気になるけれど、もし万が一のことがあったらと思うと、軽々しくは聞けない。
それに、わざわざ私に連絡が来るとも限らないのだ。

自分から踏み込むようなことはせず、おとなしくしていよう。
そう自分に言い聞かせながらも、私はどこか落ち着かない気持ちで時間を過ごしていた。

もどかしい時間を過ごしていると。
――不意に、机の上のスマホが震え出した。

着信画面に表示された名前に、ドクンと心臓が跳ねる。
勇斗からの電話だった。

「っ、もしもし?」

慌てて通話ボタンを押す。

『あ、柚那? ……俺、無事に第一志望受かったわ』

電話越しに聞こえる、心底ホッとしたような彼の声。

「えっ……! 本当!? よかった……! おめでとう!」
『おう、ありがとな』

自分のことのように喜ぶ私に、彼も嬉しそうに笑う。
無事に彼の進路が決まった安堵で、私は大きく胸を撫でおろした。

「ふふっ、本当によかったね。……でも、わざわざ電話くれるなんて珍しいね?」

LINEで済むことなのに。
私が何気なくそう尋ねると、電話の向こうで勇斗が少し照れくさそうに笑う気配がした。

『んー……まあ、文字より声で直接伝えたくてさ。……一番に、な』

――一番に。
その言葉が、胸の奥にすとんと落ちて、優しく広がっていく。
彼がこうして私を選んで報告してくれたことが、どうしようもなく嬉しかった。

「……そっか。ありがとう、勇斗」

声が震えないように、私はふわりと笑ってそう答えた。
進路が決まった彼への純粋なお祝いと、安心感。
それだけで十分なはずなのに、受話器越しに響く彼の声は、私の胸の奥をほんの少しだけ焦がしていく。
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