喪失騎士エルディーテの冥界追想録 〜 孤独な騎士の過去を辿る、運命を覆す相互救済ロマンス~

警告

レニー・レイヴン。
レイヴン公爵家の三男であり、のちに帝国騎士団の頂点に立つ存在。

まさにレイヴンはエルディーテの知っている団長その本人だった。

エルディーテの知る団長は五十代前半の独身で、一見穏やかで紳士的だが階級意識が異常に強い人間だ。

思い返せばオルディスを蔑むレイヴンの言動には一致するものが多々ある。

特に分かりやすいのが、エルディーテに対する態度だ。彼は公爵家出身ということが女であること以上に価値があると見ている節がある。それが理由なのだろうが、王女付きの護衛騎士の就任を後押したのも彼の手腕だった。反対どころか推薦までしたのだ。

そして宿舎という共同体の中で、エルディーテに色目や喧嘩を吹っ掛ける連中を仲裁する手段として、決闘を提案したのもレイヴンである。

その結果として、負けなしのエルディーテは強さを誇示することが出来た。

だから良い人間かと言うとそうではない。

階級主義という彼の価値観から生じた副産物によってエルディーテ自身が益を得たことはあるが、レイヴンは厳粛であらねばならないはずの騎士団内部の風紀を乱し、軍律よりも家格を優先する組織の癌だ。

組織に所属するため言葉にすることは憚れるが、実力主義のグラウスとは真っ向から考えが異なる。

それが団長であるレイヴンに対するエルディーテの印象だ。

その彼の……過去なのか?

それとも邸が見せている根拠ない幻覚なのか。

定かでないがエルディーテが見ている現場はとにかく胸糞の悪い場面だった。

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