田中里奈21歳、全て忘れてパリピになりたい。
間話 第1.5話 side千隼
「あの男……他の女に私の悪口を刷り込まれてまんまと信じて私を振った……!」
仕事終わり、小さな居酒屋で眉間に皺を寄せながら酒の入ったグラスを握りしめている女の子。
彼女は1ヶ月くらい前から通い詰めている常連さんでいつも元カレへの恨みを俺に話していた。
里奈の座るカウンターを挟んだ向かいで、困り顔で彼女の頼んだ焼き鳥を焼く。
「いいじゃん。そんな人に流されやすい男、別れて正解だよ」
こんな一途で献身的な子を振る、見る目のない男なんて忘れてしまえばいい。
「それはそう!本当にそうなんだけど!」
里奈の目からうるうると洪水のように涙が溢れる。
「うっ……ううっ……」
「あーわわわ、えっと、はい!ティッシュ!あと、ねぎま!焼けたよ!」
1ヶ月前もこうやって俺は彼女を慰めていた。
————————————
千隼は親の営む居酒屋をたまに手伝っていた。
普段、教師の仕事をしている千隼はたまにしか手伝いに来られなかったが、両親はそれでも喜んでくれた。
仕事が終わると実家に行き、両親の店で手伝いをする。
2年前、居酒屋の買い出しで歓楽街を抜けようとした時、3年間付き合った彼女がナイトクラブの外で他の男といちゃついているのを見つけてしまった。
喧嘩の末、別れてから恋人のいない千隼にとって居酒屋の常連たちと話すことは余計なことを考えないで済む時間だった。
里奈が居酒屋に来た日も、たまたま千隼が手伝いに入っていた日。
その日は大雨。
いつも来ている常連もあまりの大雨で来られず、店を閉めてしまおうか悩んでいる時だった。
ガラッ——
年季の入った引き戸が開き、雨の音を大きくする。
「あの……やってますか?」
目を腫らし、濡れた髪を耳にかけて伺うようにこちらを覗く里奈の姿は、何故か千隼の胸に強く印象を残す。
里奈から目を離せなかった。
俺は……何を考えて——
「あの……?」
里奈の言葉に千隼は我に帰る。
「あ!やってますよ!雨大丈夫ですか?タオル持ってくるからカウンターに座っててください。」
「……ありがとうございます」
それが俺と里奈の出会いだった。
タオルを差し出し、温かいお茶を出すと同時に彼女は堪えられなくなったのか涙を溢れさせて泣き出した。
驚いて戸惑っていると6年付き合った彼氏が他の女の言葉を信じて彼女を振ったと言う。
自分は変わらず大好きでずっと一緒に居たいと思っていたのに
仕事も辛くても彼との今後を考えて頑張っていたのに
私より他の女を信じたことが苦しいと、里奈は泣いていた。
その姿が2年前の自分と重なって辛くなる。
大好きだった彼女に裏切られて自暴自棄になり、夜を遊び歩いたあの時。
沢山の女性と関わっても埋まることはなく傷は深く広がるばかりだった時間。
この子は今、あの時の俺と同じ気持ちを持っているのか。
それから千隼は時間の許す限り、里奈の話を聞き続けた。
愚痴や恨みにも、あの頃の自分が言って欲しかった言葉を里奈に言い続けた。
里奈は純粋で素直、明るく一途で真っ直ぐ。
そんな里奈に千隼は惹かれていった。
教師の方も忙しかったが、それでも彼女に会いたくて店の手伝いも増やした。
元々要領は良い方なのでそこまで崩れることもない。
里奈の愚痴を聞くたびに俺は思った。
こんな子に愛されたらどれだけ幸せだろう、と。
千隼の恋心は膨らむばかりだった。
里奈と出会って1ヶ月、酔いに任せて彼女が1人でクラブに行くなんて言った時は体の熱が一気に引いた。
「ダメだよ。あそこはそんなに軽い気持ちで行っていいところじゃない」
思わず、強い口調で止めてしまう。
あんなところにこんな純粋な子をいかせたら騙されて食い散らかされて……
嫌な想像が千隼の頭をよぎる。
「あ、いや、その、ごめんなさい……調子に乗って……ただの客なのに……迷惑かけてごめんなさい!私帰りますね……」と申し訳なさそうに帰ろうとする里奈を引き止める。
このまま、帰したらどこかで行こうとするかもしれない。
それは嫌だ。そうなるくらいなら
「……いいよ。行こうかクラブ。ちょっと仕事変わってもらってくるから支度して待っててくれる?今日は奢るから、お金はいいよ」
戸惑う里奈を置いて千隼は親に出かけることを伝えに店の奥に入る。
着替えを済ませてスマホと財布だけを持ち、店を出た。
絶対、他の男になんて渡さない。
仕事終わり、小さな居酒屋で眉間に皺を寄せながら酒の入ったグラスを握りしめている女の子。
彼女は1ヶ月くらい前から通い詰めている常連さんでいつも元カレへの恨みを俺に話していた。
里奈の座るカウンターを挟んだ向かいで、困り顔で彼女の頼んだ焼き鳥を焼く。
「いいじゃん。そんな人に流されやすい男、別れて正解だよ」
こんな一途で献身的な子を振る、見る目のない男なんて忘れてしまえばいい。
「それはそう!本当にそうなんだけど!」
里奈の目からうるうると洪水のように涙が溢れる。
「うっ……ううっ……」
「あーわわわ、えっと、はい!ティッシュ!あと、ねぎま!焼けたよ!」
1ヶ月前もこうやって俺は彼女を慰めていた。
————————————
千隼は親の営む居酒屋をたまに手伝っていた。
普段、教師の仕事をしている千隼はたまにしか手伝いに来られなかったが、両親はそれでも喜んでくれた。
仕事が終わると実家に行き、両親の店で手伝いをする。
2年前、居酒屋の買い出しで歓楽街を抜けようとした時、3年間付き合った彼女がナイトクラブの外で他の男といちゃついているのを見つけてしまった。
喧嘩の末、別れてから恋人のいない千隼にとって居酒屋の常連たちと話すことは余計なことを考えないで済む時間だった。
里奈が居酒屋に来た日も、たまたま千隼が手伝いに入っていた日。
その日は大雨。
いつも来ている常連もあまりの大雨で来られず、店を閉めてしまおうか悩んでいる時だった。
ガラッ——
年季の入った引き戸が開き、雨の音を大きくする。
「あの……やってますか?」
目を腫らし、濡れた髪を耳にかけて伺うようにこちらを覗く里奈の姿は、何故か千隼の胸に強く印象を残す。
里奈から目を離せなかった。
俺は……何を考えて——
「あの……?」
里奈の言葉に千隼は我に帰る。
「あ!やってますよ!雨大丈夫ですか?タオル持ってくるからカウンターに座っててください。」
「……ありがとうございます」
それが俺と里奈の出会いだった。
タオルを差し出し、温かいお茶を出すと同時に彼女は堪えられなくなったのか涙を溢れさせて泣き出した。
驚いて戸惑っていると6年付き合った彼氏が他の女の言葉を信じて彼女を振ったと言う。
自分は変わらず大好きでずっと一緒に居たいと思っていたのに
仕事も辛くても彼との今後を考えて頑張っていたのに
私より他の女を信じたことが苦しいと、里奈は泣いていた。
その姿が2年前の自分と重なって辛くなる。
大好きだった彼女に裏切られて自暴自棄になり、夜を遊び歩いたあの時。
沢山の女性と関わっても埋まることはなく傷は深く広がるばかりだった時間。
この子は今、あの時の俺と同じ気持ちを持っているのか。
それから千隼は時間の許す限り、里奈の話を聞き続けた。
愚痴や恨みにも、あの頃の自分が言って欲しかった言葉を里奈に言い続けた。
里奈は純粋で素直、明るく一途で真っ直ぐ。
そんな里奈に千隼は惹かれていった。
教師の方も忙しかったが、それでも彼女に会いたくて店の手伝いも増やした。
元々要領は良い方なのでそこまで崩れることもない。
里奈の愚痴を聞くたびに俺は思った。
こんな子に愛されたらどれだけ幸せだろう、と。
千隼の恋心は膨らむばかりだった。
里奈と出会って1ヶ月、酔いに任せて彼女が1人でクラブに行くなんて言った時は体の熱が一気に引いた。
「ダメだよ。あそこはそんなに軽い気持ちで行っていいところじゃない」
思わず、強い口調で止めてしまう。
あんなところにこんな純粋な子をいかせたら騙されて食い散らかされて……
嫌な想像が千隼の頭をよぎる。
「あ、いや、その、ごめんなさい……調子に乗って……ただの客なのに……迷惑かけてごめんなさい!私帰りますね……」と申し訳なさそうに帰ろうとする里奈を引き止める。
このまま、帰したらどこかで行こうとするかもしれない。
それは嫌だ。そうなるくらいなら
「……いいよ。行こうかクラブ。ちょっと仕事変わってもらってくるから支度して待っててくれる?今日は奢るから、お金はいいよ」
戸惑う里奈を置いて千隼は親に出かけることを伝えに店の奥に入る。
着替えを済ませてスマホと財布だけを持ち、店を出た。
絶対、他の男になんて渡さない。