田中里奈21歳、全て忘れてパリピになりたい。

第3話 危機感

 綺麗なマンションの前、タクシーのハザードがチカチカと辺りを照らす。

「里奈、降りられる?ゆっくりでいいから」

 支払いを済ませた千隼は里奈の体を優しく支えてタクシーから降ろし、2人でマンションの中へ歩く。

「ここは……?」

 気を抜いたら瞑ってしまいそうな目を一生懸命開く。

「……俺のマンション」

「千隼の……?」

「……。」

 千隼はそれ以上何も言わない。
 様子のおかしな千隼に疑問を持つが、それ以上は何も考えられない。
 
 酔いに任せてそのまま一緒に歩く。
 
 エレベーターで7階に上がり、廊下を進む。
 千隼は鍵を取り出して玄関を開けると里奈を家に入れ、ガチャリと鍵を閉める。


 ドンッ——


 入った途端、里奈を玄関扉に追い詰める千隼。

 背後の扉に腕をつき、里奈の瞳を至近距離で見つめる。


「えっ……」

 里奈は驚いて千隼の目を見つめる。

 うとうとしていた頭に強い刺激が加わり、少しだけ里奈の意識をはっきりさせた。


「……こうやって、俺に襲われるとは思わなかった?」

 千隼は少し怒っているのか低い声で小さく囁く。

「クラブは危ないって言ったし、お酒も飲みすぎたらダメって言ったよね?」

「あ……」

 千隼の言葉が里奈の心に強く響き、罪悪感に申し訳なくなる。

「ごめんなさ」

「こうやって知らないマンションに男と……っ。これに関しては送っていかなかった俺も悪いけど、このまま帰すのも怖かったし……」

 申し訳なさそうに視線を逸らす千隼。
 里奈は上目遣いのまま千隼の姿を見つめている。

「……っ。」

 その姿に理性を刺激された千隼は奥歯をギリッと噛み締めて、里奈の肩にそっと頭を乗せた。

「俺の気も知らないで……」

 そのまま少し沈黙が流れ、決意したように千隼が頭を上げて里奈を抱き上げる。

「えっ?!」

「靴、脱がすからじっとして」

 里奈はいきなり抱き上げられて驚き、千隼の体に抱きつく。
 靴を脱がし終えるとそのまま里奈を抱いて部屋の奥へと進む。

 リビングの横の部屋を開けると大きなベッドが一つ。
 綺麗に整えられ、シーツも綺麗にかけられている。


 千隼はベッドに里奈を降ろし、寝かす。

 心臓が飛び出てしまいそうなほど早く打っているのがわかる。

「里奈はもう少し、危機感を持った方がいい」

 押し倒されたような体制、耳元で千隼の声が熱を帯びている。

「好きな子を目の前に耐えられるほど、俺は我慢強くないよ」

 
 そう言って千隼は里奈の首筋に軽く唇を当て、離れた。


 呆然と固まる里奈。
 
 心臓を掴まれたように胸に残る刺激。

 首筋に残る——キスの感触。


 千隼は扉に手をかける。

「俺はリビングで寝るからベッドは使って。……俺は、里奈が好きだから、俺の前で無防備にならないで。」

 ゆっくりと扉を閉めていく千隼。
 最後に動きを止めて、小さく呟く。


「次は我慢できる自信、ないから」


 パタン——と寝室の扉が閉まり、1人ベッドの上で千隼の去った扉を見つめる里奈。


 ボンっ!と顔を真っ赤にして限界を迎えたように倒れ込み、そのまま眠ってしまった。
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