偽りの無い貴方を助けたくて


町中の、死神がふらふらと寄ってきそうな薄暗い公衆電話の一角、百合は私の手を取って電話を取ろうとする手を止めた。



「……証拠はあるの?」



「もちろんあるよ。

写真を取ったんだーーー晴海先生と校長がキスをしている真実を」


百合はゴクリと喉を鳴らして、「本気なんだね……?」と答えてきたから、私は受話器を取る。



出てきたのは、「留美子さん」というーー晴れやかな声の持ち主。



優しそうな、でも……本当に問題がある人の思いを、飲み込んでくれるのかと思う様な、そんな印象を最初に受けた。



私は震える百合の背中をいなしながら、事細やかに経緯を説明した。



が、すべて話終えたときに「留美子さん」の声音が強張った。



「残念だけども………すぐには、動けないわ」




すぐには……動けない?




どうゆう事ですか?と、怒りに震える胸の奥底を、どうにか息で止め、殺し、尋ねた。



すると、でてきた言葉は「セカンドレイプになるかもしれないから」との事だった。



「セカンドレイプ」



初めて聞くはずの言葉なのに。



まるで自分自身が遠い昔にその言葉を聞いたら、死ぬ呪いをかけられた様な感触がして、ゾッとする。


「報道で被害者当人や、その家族が傷ついてしまうことを、セカンドレイプっていうの。


あなたのその話だと、その傷ついている人はーーー娘さんがいるのよね?」




晴海先生は、六歳の愛娘を持っている。



授業中、生徒に質問された時、愛おしそうに話していたのを聞いたことがあるけれど、うんと言おうとして言葉が詰まった。



頷いてしまえば、私の持っているカードはもう、「通報せずに見過ごす」という結末に導かれてしまいそうだったからだ。



「もう、余計な事をしないでって言ってるじゃん!!」



思わず、受話器が出が滑り落ちて、カップルが喧嘩している声が入ったのかと思った。



振り向くと、視界の先に希が、眉毛の先端を天空に貫くみたいな覚悟で私の受話器を奪って佇んでいた。



希は、あとで電話しますとガチャリと受話器を置いた。




「どうゆうこと!?


なんで、こんな百合と一緒に解決しようとしてんの!?」



まるで、自分がやっていることは目も当てられない殺人事件を起こしているという目撃者みたいな顔。







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